東レは、2層カーボンナノチューブ(2層CNT)を使った透明導電フィルム(CNT透明導電フィルム)の量産化技術を確立したことを発表した。
同社ではすでに直径が細く結晶性が高い、体積抵抗値4.4×10-4Ω・cmの導電性を示す2層CNTの製造技術を確立していた。しかし、フィルムに導電性を付与するためには、このCNTを液体中に分散させ、フィルムの表面に塗布する加工を行う必要があるが、細い直径のCNTでは一般的に液中でCNT同士が束になって凝集してしまうため、高い性能を実現することが困難であった。
今回、同社は2層CNTの2層という特長を生かすことで、外層に極性を持たせる処理を施すことで互いを反発させ束をほぐす技術を開発、凝集のない均一な分散液の製造を実現した。また、同社のフィルム加工技術を駆使することで、直径1.5~2nの2層CNTをフィルム上に均一に塗布する技術を確立、これにより高性能かつ高品質なCNT透明導電フィルムを量産できる技術を確立したという。
こうして作られたCNT透明導電フィルムは、90%以上の光透過率と、実用的に十分な導電性を高いレベルで両立しているほか、現在主流であるITOフィルムに比べて折り曲げたり、引き伸ばしたりしても断線しない柔軟性を確保でき、耐湿熱性や耐衝撃性も高いことが確認されたという。
さらに、ITOフィルムは若干黄色がかった色目であるが、同フィルムは無彩色な色目であり、ディスプレイの色再現性を向上させることが可能になることから、電子書籍や電子看板などの電子ペーパー用途などでの適用を見込むとする。
なお、同フィルムの製品ラインアップとしては、光透過率90%、表面抵抗値500Ω/□の標準グレードと、光透過率92%、表面抵抗値2500Ω/□の高透明グレードの2種類が提供される。