ヨーロッパ宇宙機関(ESA)はこのほど、火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、火星表面上の海岸線と見られる地形の内側に、海底に似た堆積物を発見したと発表した。これは火星の一部がかつて海に覆われていたことを示す有力な証拠とされる。

火星北部の平野が低密度の物質に覆われていたことが判明

ESAは、マーズ・エクスプレスに搭載されているレーダー「MARSIS」が収集したデータを2年以上にわたり解析。その結果、火星北部の平野が低密度の物質に覆われていたことが判明した。

火星における海の存在は以前から考慮されており、複数の宇宙探査機が取得した画像から、海岸線と見られる特徴がかろうじて確認されているものの、意見の分かれる話題である。

火星の海は、40億年前と30億年前の二度、存在したと考えられ、火星の気温上昇や地熱活動が活発になった結果として地下の氷が解け、その水が低地に流れ込み、海が形成されたと考えられる。

MARSISのレーダーは火星の地表から60~80メートルの地下まで届き、深い地下層の様子から、堆積物質と氷の根拠を調査することができる。

二番目の海が存在したのは短期間であったとされ、海水が凍り地下に保存されたか、あるいは蒸気になって大気中に消えたなどして、100万年未満で消滅したとされ、生命体が形成されるほど長くは存在しなかったであろうという見解が示されている。

生命が存在した証拠をつかむには、さらに過去にさかのぼり、これよりも長い期間水が存在した時期がなかったかどうかを調べる必要がある。

それでもなお、今回の調査結果は火星に水が存在したというこれまでにない証拠を示すものであり、火星の地質学史上、水が果たした役割をさらに証明するものになるという。

レーダーを使って取得されたデータは、火星の謎に対する新たな情報をもたらしてくれるものだが、「すべての水はいったいどこに行ったのか?」という疑問はまだ残る。今後もマーズ・エクスプレスの調査は続く。

マーズ・エクスプレスに搭載されている「MARSIS」のレーダーは火星の地表から60~80メートルの地下まで届く