自分の好きなクリエイターの制作活動を、ワンコインから資金協力できる方法があるのをご存知だろうか? インターネットを通じて徐々に浸透しつつある「マイクロ・パトロン・プラットフォーム」と呼ばれるサービスだ。パトロンとは芸術家の活動を支援する人のこと。古くは、業を起こし手に入れた資産で芸術家を支援する資産家のことを差していたが、現代では気軽にだれでもパトロンになれる。

サービス普及の理由は"見返り"にあり!?

このマイクロ・パトロン・プラットフォームの火付け役になったのは、米国の「Kickstarter」というサービスだ。マイナビニュースでも多く登場するクリエイティブディレクター・川村真司氏が作品『映し鏡』の制作過程で資金調達をするために利用したことでも知られている。この新しいサービスの日本版も2011年に登場した。ハイパーインターネッツが運営する「CAMPFIRE」だ。国内での知名度も少しずつ高まり、クリエイターや支援者の間でも徐々に広がりを見せ始めている。

「Kickstarter」

「CAMPFIRE」

なぜ今、こういったサービスが受け入れられつつあるのか。それは、支援したパトロンのみに還元される"報酬"に理由がある。実際に事例で見ていこう。現在CAMPFIREでは、東京藝術大学の学生が卒業制作展示会を代官山ヒルサイドテラスで開催するために、50万円の支援金を募っている。支援者は500円から支援することができ、その金額に応じて"報酬"のレベルも上がっていく。

東京藝術大学有志による卒業制作特別展示「SOTTEN」プロジェクトページ

例えばもっとも気軽な500円であれば限定の招待状DMと制作過程の風景が載ったブックレットがもらえ、1,000円であればそれに加え、気に入った作家のサイン入りポストカードがもらえる。さらに3,000円であればオリジナル似顔絵待ち受け画面などももらえるという仕組みだ。このように、徐々に報酬のレベルは上がっていき、最高額である10万円を支援すると音楽コンサートに招待されるだけでなく、20号キャンバス大の画を見返りとしてプレゼントしてもらえるという。つまり、ただお金を集めるだけでなく、支援した側もされる側も嬉しい仕組みとなっているのだ。

支援者がもらえる報酬の一例

東京藝術大学の有志が支援を募っているこのプロジェクトは、上野キャンパスで開催された卒業制作展示会「SOTTEN」を代官山ヒルサイドテラスでも開催するための必要資金を求めるもの。自分たちにとって学生生活の集大成でもある作品をより多くの方に見てほしいと切望する一方で、彫刻などの大型立体作品を含む、多くの作品の運搬や展示会の広報活動には、学生にとってはけっして少額とはいえない費用がかかる。そこでCAMPFIREを通じて支援を募ることにしたそうだ。

学生の作品制作風景

マイクロ・パトロン・プラットフォームというサービスは、不足している資金を調達するだけでなく、クリエイターの活動を多くの人に知ってもらい、新しいファンを作るという副産物も産む。何かを作って届けたいクリエイターと、そのクリエイターを応援したいファンがつながることで、洗練された作品が少しでも多く世の中に発信されることを期待したい。これを機会に、あなたもワンコインから参加してみてはいかがだろう。