Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは1月27日、トリプル四重極ICP-MSシステム(誘導結合プラズマ質量分析装置)「Agilent 8800シリーズ トリプル四重極ICP-MSシステム(ICP-QQQ)」を発表した。
同装置は日本で開発が行われたもので、主にサンプル中の元素分析などの分野で用いられ、同社では以下のような用途に適していると説明しており、主に半導体および材料分野、大学/研究所、そしてライフサイエンスの3分野をメインに展開を予定している。
- 高純度サンプルで干渉を与える元素の超微量分析
- 土壌、岩石、素材中で多原子あるいは二価イオン干渉が起こる可能性のあるセレンやヒ素の高角度分析(HCl中のGeやAs、H2SO4中のVやTiなど)
- DNA中、タンパク質中、ペプチド中のリンや硫黄の定量分析など、ライフサイエンス・アプリケーション
システムの構成としては、従来の「7700シリーズ」ではコリジョン/リアクションセル-四重極の構成であったが、8800シリーズではコリジョン/リアクションセルの前段に四重極をさらに追加(四重極-コリジョン/リアクションセル-四重極:QQQ)。これにより、理想的な反応が起きるように工夫が施された。また、その他の導入系などの部分については7700シリーズと同様のものを使っており、装置としての信頼性も向上させたという。
一般的にイオンが通過する距離が長くなると感度が低くなると言われているが、同装置では四重極などに工夫を施すことで、感度を落とさずに逆により高い感度になるような処理が実現されており、これにより例えば、7700シリーズでも難しかった材料中の金属の分析などもより詳細に知ることができるようになった。
具体的な例としては、Coが含まれた試料中のAsの分析があげられる。従来のICP-MSでは、As(原子の質量:原子量M=75)とリアクションガスCO2を反応させ、AsO+(M=91)へと変化させていたが、Zr+(M=91)と同じであり、どちらが測定されているのか不明といったことが生じていた。同装置では、前段の四重極でZr+を除去することで、後段の四重極にZr+が入ることがなくなり、より高い精度での計測を可能とした。
また、前段、後段の四重極ともに質量は2~260の範囲で設定可能で、コリジョン/リアクションセルに入ってくるイオンを微細に制御できるため、(干渉イオンの影響により)サンプルの組成が変化してしまってもリアクションの条件を一定に保つことが可能となっており、例えば質量数が隣り合い、片方が高濃度、もう片方が低濃度という状態であっても、それぞれの材料の質量数に応じる形で微量な元素を分析することが可能となっている。
なお、同装置は2012年4月1日より販売を開始する予定。1月27日時点での予定価格は4500万円(税別)程度で、半導体分野を中心に年間20台の販売を目標として活動していくとしている。