ノークリサーチは1月24日、国内クラウド関連市場規模に関する調査結果を発表した。発表によると、2011年の市場規模は686.9億円、2012年には836.5億円、2013年には1,145.7億円に達する見込みであり、2010年時点での市場規模予想と比べると、クラウドの普及/啓蒙に2~3年の遅れが発生していることがわかった。
2010年時点でのノークリサーチによる同市場の予測は、2011年に1029億円、2012年に1937億円、2013年に3340億 円という結果であった。上記の結果と比較すると、2010年当時の予測と比べて大きく減少していることがわかる。同社では、その要因として、「クラウドがもたらすコスト削減効果への過剰な期待」、「東日本大震災を主な要因とするクラウド啓蒙の遅れ」、「事業継続対策を目的としたクラウド活用の伸び悩み」にあると分析している。
黎明期におけるクラウドはSaaSを中心に情報処理システムをより安価かつ容易に導入/運用する手段としてアピールされた。しかし、中堅・中小企業においても個別のカスタマイズやシステム連携は存在し、単にSaaSへ移行するだけでは既存システムの運用/管理コストを大きく削減することはできない。こうした期待と現実のギャップによって、中堅・中小企業を中心に「クラウドは自分達が期待したものではない」という認識が生じ、クラウド活用から距離を置く姿勢が目立つようになってきた。このコスト削減への過剰な期待に起因するクラウドへの幻滅感を早急に解消することがクラウド普及には不可欠となっている。
本来、2011年は個別の業務や業種/業態に即した多様な提案が生まれ、提供する側と利用する側の双方がノウハウを積んでいく年でもあったが、東日本大震災によってIT活用提案が事業継続へ大きく傾いたことなどにより、本来進むべきクラウド活用の提案や啓蒙が停滞してしまった。
この遅れを取り戻すためにも、クラウド関連クラウド関連ソリューションを提供する側ユーザ企業の個別ニーズを捉えた提案と啓蒙に再度取り組むことが重要と同社では分析している。
東日本大震災を踏まえて訴求された事業継続対策としてのクラウド活用だが、ユーザ企業の多くは事業対策だけでなく平常時にも効果の得られるソリューションを望んでいる。そのため平常時におけるクラウド活用のメリットを見いだせない状態では、事業継続対策の必要性を強く訴えてもクラウド活用には結びつきにくい。
さらに、東日本大震災における交通網の麻痺やそれに伴う「帰宅難民」の発生もユーザ企業のIT投資意向に少なからぬ影響を与えている。東日本大震災以前の事業継続対策はサーバを中心とした業務システムを保護することに重点を置いていた。しかし、多くのユーザ企業は「業務システムがデータセンタや遠隔地で無事に稼働していたとしても、社員がオフィスへ辿りつくことができなければ業務を継続することはできない」ということを実感する結果となった。単に業務システムをクラウドへ移すだけでは事業継続としては不十分であり、社員がリモートでアクセスできる手段も併せて講じなければならないという認識が広まったといえる。
その結果、事業継続対策に必要となるコストは増加する。そのため、特に中堅・中小企業においては「最低限の備えとしてのデータバックアップだけを行う」といった対策に留まってしまいやすい。「事業継続」というキーワードだけに頼らない、平常時におけるメリットも加味したクラウド訴求が求められている。