日本HPは1月10日、エンタープライズサーバ、ストレージ・ネットワーク製品の事業戦略説明会を開催し、「MOONSHOT」(ムーンショット)と「ODYSSEY」(オデッセイ)という2つのプロジェクトが現在進行中であることを明らかにした。
MOONSHOTは、手のひらサイズのボード上に4台のサーバを搭載することにより、4Uのサーバシャーシに288台、1ラックに2,880台のサーバの搭載を可能にする技術。これにより、89%の電力削減、94%のスペース削減を実現するという。
従来のx86サーバであれば、ラック10本にサーバ400台を搭載した場合、20台のネットワークスイッチと1,600本のケーブルが必要で消費電力は91kWとなるが、MOONSHOTの技術を使えば、1/2ラックに1,600台のサーバを搭載でき、ネットワークスイッチは2台、ケーブルは41本で済み、消費電力は1/10の9.9kWになるという。また、導入コストも330万ドルを120万ドルにできるという。
日本HP 執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 杉原博茂氏は、「これが実現すると、約20平方メートルのスペースに28,800台のサーバを収容できる。たとえば、日本の全人口1.2億人に1人1台のサーバを割り当てても、東京ドーム1.7個分の面積で設置可能だ」と語った。なお、この技術を採用したサーバ製品は、今年の前半にも登場する予定だという。
一方ODYSSEYは、HP IntegrityサーバとHP-UXで培った技術を、x86サーバに移植し、WindowsやLinuxが動作するx86サーバシステムでミッションクリティカルなシステムを動作させようというもの。これにより、Superdome 2のラック上にUNIXとx86サーバを混在させて搭載することが可能になるという。HPでは、2年以内の実現を目指すという。
日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 統括本部長の上原宏氏は、「これまでミッションクリティカルな業務はUNIXやメインフレームが利用されてきたが、今後はx86サーバが利用されるようになる。しかし、そのためのx86システムは現在存在していない。それに対するHPの回答がOdysseyだ」と語った。
日本HP 代表取締役 社長執行役員 小出伸一氏は、「ICTは企業の生産向上のための利用から人々の生活向上のための利用に変わり、今後は豊かな社会の実現に向けた利用に変遷していく。現在日本は、世界に先駆けた超高齢化社会、エネルギー問題、安全・安心(3.11の震災により)という課題に直面しており、これらを解決するには、(高度道路交通システム、介護ロボットの遠隔制御、24時間の見守りサービス、ネットスーパー、在宅ワークプレイスなどの)「FUTURE CITY」を実現する必要がある」とした上で、「テクノロジーのイノベーションがなければ、ICTの変革は実現できない」と語り、同社が2つのプロジェクトに取り組む背景を語った。
上原氏は、今後、MOONSHOT技術を搭載したサーバの発表では、これまでのようなスペックの提供ではなく、想像もしなかった新たな顧客体験を提供すると語り、具体的な内容については、「何ができるかは、これから考えなければならない、必ずお客様のビジネスに寄与できる」と述べた。
新たな活用方法を模索する施策としては、2011年4月に発表した日立製作所、日本マイクロソフト、SAP、サイベースなどのデータベースベンダーとのアライアンスや、2011年10月に発表した日立ソリューションズ、伊藤忠テクノソリューションズ、日本ユニシス、NTTデータなどシステムインテグレーターとのアライアンスを加速させ、データベースの標準化に取り組むほか、現在9社のサーバ・ストレージ、ネットワーク製品向けのパートナーを2012年度中に15社まで拡大するという。
また、これまでそれぞれ独立して活動していたユーザーフォーラムの相互連携を強め、今までにないビジネスの創造に寄与していく予定だという。