STMicroelectronicsは、プローブを使用せずに電気検査した半導体ウェハの製造に成功したことを発表した。
今回開発した非接触電気検査は、同社のAlberto Pagani、Giovanni Girlando、Alessandro Finocchiaro、およびカターニャ大学のGiuseppe Palmisano教授による研究開発プロジェクト「UTAMCIC (UHF TAG Antenna Magnetically Coupled to Integrated Circuit)」の成果であるEMWS(Electro Magnetic Wafer Sort)技術を用いており、ウェハ上に並んだ回路への接続として電磁波を使用し、RFID(Radio Frequency Identification) ICなどを含むウェハを非接触で検査するというもの。非接触モードでは検査の並列度が向上するため、非接触検査によって検査時間が短縮されるほか、標準的な接触検査で時々発生するパッド損傷がなくなるため、歩留りが向上するという。
今回開発したEMWSはEWS(Electrical Wafer Sort)が進化したもので、最終的にパッケージングされた製品の組立・検査を行う前のウェハ製造工程における最終段階で実行する。この段階で加工済みウェハには、ダイと呼ばれる同一の回路がアレイ状に配置されているが、通常のEWSではATE(Automatic Test Equipment)に接続されたプローブ・カードが各ダイの上に移動し、顕微プローブがダイ上のテスト・パッドに接触する。その後、ATEによる検査でダイが完全に機能することを確認し、機能しないダイはパッケージング前に廃棄される。
一方、EMWSは、ATEが発生させた電磁波を各ダイに内蔵された超小型アンテナが受信し、電源供給・通信を行う。この方法により、ダイ上のテスト・パッド数が減少するため、ダイの小型化が可能となる。また、消費電力の高い製品を検査する際はプローブで電力を供給する必要があるが、消費電力の低い製品に対しては濃縮した電磁エネルギーによってダイに直接給電し完全に非接触な検査が可能となっている。
なお、今回開発したEMWS技術は、2010年12月にパリで開催されたCartes and IDentification 2010の「生産・試験」カテゴリで、「Sesames Award」を受賞したという。