ポジティブな気分なら捗り、落ち込んでいるとパフォーマンスも下がる――仕事とは、そんなものだろう。だとすれば、単に目標を立てて部下を叱咤奨励するだけでなく、ポジティブな気持ちで仕事をしてもらうよう対策を講じるのも管理職の役目かもしれない。そのために何をすればよいのか、専門家のアドバイスを紹介しよう。
ペンシルバニア大学ウォートンスクールのNancy Rothbard教授のコラム「職場での笑顔を軽視すべきではない(原題:Put on a Happy Face. Seriously)」によると、ハッピーな気分で一日をスタートした人の多くが終日気分よく仕事をしているのに対し、憂鬱な気分で一日をスタートした人は時間を追うごとに気分が悪くなる傾向があるという。
Rothbard氏はオハイオ大学のフィッシャー経営学院のSteffanie Eilk教授と共同で、電話サポートスタッフのムードと生産性の関係を調査した。その結果、明らかな好循環と悪循環が見られたそうだ。憂鬱な気分で一日をスタートした人はなかなか気分が変わらないために休憩時間も多く、生産性が10%以上も落ちていたという報告も出ている。
こうしたことから、「業績を改善したければ、従業員のネガティブなムードに気が付いたらそれをリセットする必要がある。管理職はネガティブなムードを減らす、またはよいムードを膨らませる――どちらかにフォーカスして対策を講じるべき」とRothbard氏は主張する。業績目標が生産性であればネガティブなムードの削減、品質改善であればポジティブなムードの増強を考えるべきというわけだ。
具体的な対策例も紹介されている。ネガティブなムードを減らしたい場合、就業時間前にモチベーションを高めるような時間を持ってもよいし、前向きなメッセージを入れた電子メールを全員に送るのも手だ。おしゃべりの時間を設けるのもよい。5~10分の雑談タイムで、朝のスタートががらっと変わるかもしれない。「腹が減っては……」ということわざにもあるように、スナックを用意するなど胃袋を満たすのも効果があるという。
さらに、従業員間のやりとりでもムードは改善したり、悪化したりする。部下が数分の遅刻をした時にマネージャーがすぐに怒鳴ってしまうと、その場のムードは悪くなる。逆に、言葉一つで落ち込んでいる人の気分が好転することもある。
従業員側も心構えが必要だ。「出社前に家族と喧嘩をしたせいで一日が台無しになった」というのは残念だ。イライラ、悲しみ、怒りなどのネガティブな気分は、意図的に出社までに追いやるようにしたい。「お茶をする」「音楽を聴く」「いつもとは違う道を通る」などの工夫をするだけで、気分転換を図ることが可能だという。
職場に限ったことではないが、人の気分は周囲に伝染する。笑顔が増えればその場の雰囲気はよくなり、作業も捗る。ぜひ、心がけたいものだ。