パナソニックは12月19日、高耐圧の次世代パワーデバイスとして期待されているSiCパワーデバイスにおいて、還流ダイオードを一体化したSiCパワートランジスタを開発したと発表した。従来はモータなどをインバータで駆動する場合、エネルギー放出のために外付けの還流ダイオードが必須であったが、今回の開発により、SiCパワーデバイスでインバータを構成する際に部品点数を半減でき、小型化、低コスト化が可能となる。
一般的にSiCパワートランジスタに内蔵している寄生ダイオードは電流の立上り電圧が約2.5Vと高く、外付けダイオード素子の機能を代替することはできなかった。同社は、従来からSiCパワートランジスタのチャネル層として開発してきた薄い高濃度エピタキシャル層の成長技術を発展させることで、約0.5Vの立上り電圧特性を有する逆方向電流をこのチャネル層に流せることを発見した。
今回の開発では、極薄・高濃度チャネル層と高濃度ボディ領域の最適な組合せ設計により、約2.8Vのトランジスタのしきい値電圧と約0.5Vの還流ダイオード立上り電圧が同時に得られるパワートランジスタを実現した。具体的には、標準的な設計に比べチャネル層の濃度は約200倍の高濃度に、厚みは約1/3に薄膜化し、そしてボディ領域の濃度は約10倍の高濃度に設計している。これにより還流ダイオードの機能をパワートランジスタに一体化することが可能になった。
また部品点数が半減することで、インバータモジュールのサイズが約半分に小型化できる他、素子数を半減することで高価なSiC基板の材料コストが約半分になり、低コスト化が可能になる。