太陽光発電協会(JPEA)およびSEMI(Semiconductor Equipment and Materials Institute)が主催する太陽光発電に関する総合展示会「PVJapan 2011」が12月5日から7日までの3日間、幕張メッセにて開催された。開催規模は主催者発表で、6カ国・地域から250社/団体が600小間に出展し、入場者数は3日間でのべ5万人が見込まれた。
今回で4回目となる同展示会は、例年夏場に開催されてきたが、今年は東日本大震災の影響による夏の節電を考慮し延期された。主催者のSEMIが手掛ける半導体製造装置・材料に関する国際展示会「SEMICON Japan 2011」と一部日程を重複させる形で12月の開催となった。なお、SEMIでは次回の開催についても、来年夏の電力不足の懸念があることから、2012年12月3日からの開催を予定している。
設置効率向上や高機能化など実用的な提案
今年のPVJapanは東日本大震災の影響による太陽光発電への関心の高まりや、全量買取制度による市場拡大の期待を受け、より実用的な提案を行う出展社が多かった。住宅向けで設置する屋根に対する意匠性や、発電効率を高める提案が見られた。
京セラは、住宅向け製品ラインナップとして、住宅用太陽光発電システムの新製品「ECONOROOTS ADOVANCE」を出展した。複雑な形状や限られたスペースの屋根にも無駄なく搭載が可能となっている。また、屋根材一体型の「新型 HEYBAN」を出展した。屋根との一体感を向上させ、デザイン性を追求している。
さらにメガソーラー向け大型太陽電池モジュールとして、海外向けの325W 高出力多結晶シリコン型太陽電池モジュールを参考出展した。
グリーンテックは、屋根材一体型住宅用太陽電池モジュール「XSOL SLIVER」を出展した。従来の太陽電池モジュールが直列接続であるのに対し、XSOL SLIVERはセル・モジュール共に並列接続を採用している。これにより、屋根が影に覆われた場合でも、影に覆われ場部分以外の発電効率が変わらないため、影の影響を受けにくい。
GLOBAL SOLARは、フレキシブルCIGS型太陽電池モジュール「PowerFLEX」を出展した。モジュール変換効率は約10%とフレキシブル太陽電池としては高効率を実現しており、軽量性や曲面への設置の容易性を活かした用途の提案を行った。展示品の1つである「遮水シート一体型太陽電池(仮称)」は、土地の形状に追従可能なフレキシブル性を活かした応用例で、法面、盛土などの遊休土地を有効活用する。
フジプレアムは、超軽量太陽電池モジュール「希(のぞみ) FCTシリーズ」を出展した。軽量化により設置時の負荷を低減する。化学強化ガラス、EVA、バックシートで構成されるモジュールにおいて、化学強化ガラスに従来は薄型テレビなどのディスプレイ用途で使われているガラス材を使用し軽量化を実現した。最大出力215Wの「FCT-215」は、1482×985×35のサイズで重量は従来比1/2となる8.2kg以下となっている。
次世代以降を睨む先端品の開発も進む
実用的な提案の一方で、機能をさらに進化させた開発品の参考出展が見られた。
パナソニックは、両面発電太陽電池モジュール「HIT Double」を参考出展した。表面から入射光で受けるだけでなく、裏面から反射光を受けて、両面で同時に発電することで、標準のHIT太陽電池モジュールに比べて発電量は約25%向上するという。
シャープは観測衛星に搭載されている化合物3接合型太陽電池を出展した。InGaP/GaAs/InGaAsの3つの層の間にあるトンネル接合層の直列抵抗を低減し、変換効率を2009年の35.8%から現在は36.9%に向上している。
太陽誘電は光ディスク型の色素増感太陽電池を出展した。光ディスクメーカーとしてのノウハウや強みを活かし、光ディスク型の形状で開発を進めている。開発品は、プラスチック基板を使用し、光ディスクと同じ直径120mmで厚さ0.3mmの薄型化および軽量化を実現した他、独自の電極引出構造によりパネル基板への着脱が容易となっている。現状での発電効率は8%で、今後はさらに改善に努めていく。なお、シングルCDで用いられる直径80mmサイズの方が120mmサイズよりも効率は良くなると言う。
蓄電システムが太陽光発電をサポート
太陽光発電の有効活用および災害時の電源確保に向けた蓄電システムの出展も見られた。
パナソニックは「公共・産業用リチウムイオン蓄電システム」を出展した。蓄電容量は15kWhで、三相200V/単相100V・200Vのマルチ出力に対応する。太陽電池からの直接充電が可能で、災害時においても継続的に電源を供給できる。2011年12月15日より受注を開始する予定。
また住宅用には鉛蓄電池を採用した「住宅用蓄電システム」を出展した。蓄電容量は0.96kWhで、停電時に卓上照明・ポータブルテレビ・CDラジオなど合計120Wの電子機器を最大3時間利用可能。2011年12月20日より受注を開始する予定。
シャープは「業務用バックアップシステム」を出展した。鉛蓄電池を採用し、停電時でも太陽光発電が発電できる状態において太陽光発電システムの自立運転モードと接続することで、電子機器の稼働だけでなく、蓄電池への充電も可能となっている。蓄電容量は2.7KWhで、出力は1.4kW。
なお、同社では住宅用に「リチウムイオン蓄電池」を参考出展した。業務用がすでに発売を開始しているのに対し、住宅用は商用化の目処は立っていないという。
東芝は、住宅向け蓄電システムを出展した。鉛蓄電池を採用し、蓄電容量は2.1kWhで、3.6kWhおよび5.1kWhには増設バッテリーで対応できるという。太陽電池と組み合わせたシステムとして提案しており、停電時には太陽光発電システムの自立運転機能により蓄電池に充電できる。
また、自社のリチウムイオン電池「SCiB」を搭載した「無瞬断パワーユニット」も出展。定格出力容量は700Wで、400Wの機器を約3時間連続して使用できる。店舗・オフィスなどにおける停電時の情報機器の継続使用を想定している。