物質・材料研究機構(NIMS)環境再生材料ユニットジオ機能材料グループは、様々な産地の天然鉱物、様々な化学組成を有した無機材料に対して、適材適所の物質・材料を絞り込みのための基礎データを収集し、データベースとして2011年12月13日10:00より公開すると発表した。
同研究は、主として平成23年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」において実施され、データベース構築は物質・材料研究機構ジオ機能材料グループの山田裕久グループリーダーを中心に、北海道大学、岩手大学、東京工業大、島根大学、宮崎大学、首都大学東京、金沢工業大学、国際農林水産業研究センター、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構、電力中央研究所が行った。
東日本大震災による福島第一原子力発電所(福島第一原発)事故によって放出された放射性物質の除去・回収方法が模索されている。その中で、現在もっとも有力な方法として、ゼオライトをはじめとした天然鉱物を吸着材として用いることが検討されているが、こうした天然鉱物は、同じ物質名のものであっても産地や組成によって吸着能力に差があるほか、放射性物質の濃度や、使用する環境の酸性度などの条件によって性能が変化してしまう。そのため、どのような現場で使用するかによって有効な吸着物質が異なるため、各現場の状況に合わせた最適な吸着材を選ぶ必要があるという課題があった。
しかし、そうした数多くあげられた吸着材候補物質について、その吸着能力を網羅的に示したデータは世界的にも存在せず、吸着材を選ぶ際のデータベースを作ることが求められていた。
そうした要望を受けて各大学や研究機関などが協力して様々な産地の天然鉱物、様々な化学組成を有した無機材料に対して、適材適所の物質・材料を絞り込みのための基礎データを収集、データベースとして公開することを決定したという。
同データベースの対象はセシウム、ストロンチウムおよびヨウ素の吸着材で、検討した吸着材料は、様々な産地・化学組成を有した候補材料約60種に対し基礎的データ800点近くを収集している。
福島第一原発事故で生じた放射性物質の放出により汚染された対象物は多岐に渡り、発電所内に留まる炉心の冷却に使用された海水を含む汚染水や原発周辺および広域に汚染が拡大している土地(田んぼ・畑・果樹園など)、森林、水、建物、道路などが想定されている。また、汚染された水の分布も、海水、河川水、ため池や湖、プール、農業用水など多様であり、作業チームでは、こうした様々な現場での放射性物質の除去に対応すべく、多種にわたる吸着物質を多様な条件下で実験しデータ収集を行い、その結果を提供していくとしている。
なお、同データベースはNIMSが提供している「物質・材料データべース(MatNavi)」の中に新たな枠組みを設けて提供され、アクセスは12月13日10時より可能となる予定のほか、日本原子力学会などの学協会のWebサイトなどともリンクする予定だとしている。