パナソニックは12月8日、これまで十分に解明されていなかったReRAMの動作原理とデータ保持の劣化メカニズムを解明することでデータ保持技術を確立、10年間のデータ保持を実用化レベルのメモリ容量(256kビット)で実証したことを12月5日から7日にかけて米国にて開催された半導体の国際会議「IEDM 2011」にて発表した。同成果は、次世代の不揮発性メモリとして期待されているReRAMの信頼性を裏付けるものであり、量産化に貢献するものだと同社では説明している。
同社の研究チームは2008年に、ReRAMの抵抗変化現象が電極界面での酸化・還元反応に基づくものであることを明らかにしていたが今回は、抵抗変化現象が数10nm程度の微小な領域で起こっていることを明らかにし、その断面の直接観察に成功した。これまで、動作の状況から微小な抵抗変化領域の形成が示唆されていたが、実際に抵抗変化している状態での抵抗変化領域を観測した例はなかった。
具体的には、電子ビーム吸収電流法(EBAC:Electron Beam Absorbed Current)で電極上部から抵抗変化領域の位置を特定し、その位置を狙って透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)により抵抗変化領域の断面を観察した。
また、ReRAMの高抵抗・低抵抗状態の抵抗値の温度依存性を詳細に解析することで、その電気伝導機構が、酸化物中の酸素欠陥を介するホッピング伝導であることも明らかにした。これらの結果より、ReRAMの抵抗変化動作メカニズムが、「微小抵抗変化領域/電極界面での酸化・還元反応による酸素欠陥密度の変調」であることが明らかとなったという。
さらに、データ保持特性劣化(抵抗値の変化)について、抵抗変化領域内の酸素欠陥濃度が酸素の拡散現象によって変化すると仮定し、保持特性劣化モデルを構築、劣化量を定式化したところ、高抵抗・低抵抗いずれの状態においても、広い保持温度に対して実験結果と良好な一致を示し、モデルの妥当性を証明したという。
これにより、データ保持寿命が温度加速試験で予測可能であることが示されたほか、データ保持特性は抵抗変化領域径の違いにより変化することを初めて観測、抵抗変化領域径制御の重要性を示した。
これらの結果から、抵抗変化領域サイズを最適制御し、信頼性劣化モデルに基づき、256kビットのメモリで温度加速によるデータ保持寿命を予測、85℃・10年以上の保持特性を有することが確認されたことにより、実用レベルの容量での信頼性が実証されたこととなり、ReRAMの量産が可能となることから同社では今後、ReRAMを搭載した低消費電力マイコンの実用化や、スマートフォンやタブレットPCなどのさらなる高速・低消費電力化に向けた取り組みを進めるとしている。