ロームは12月5日、600Vで0.79mΩ・cm2、1200Vで1.41mΩ・cm2の低オン抵抗を実現したSiCトレントMOSFETを開発したことを発表した。同成果の一部は京都大学大学院 工学研究科 木本恒暢 教授との共同研究によるもので、詳細は12月5日より米国ワシントンDCにて開催される半導体の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting:国際電子デバイス会議)」にて発表される予定。
同MOSFETでは、従来のSi-MOSFET比で1/20以下、すでに量産化されているSiCデバイスと比べても1/7以下のオン抵抗が実現されており、これにより電力送電網の電力変換、パソコンやデジタル家電の電源、冷蔵庫やエアコンのインバータ、電気自動車、鉄道車両に至るまで、身の回りのあらゆる所の電力変換器で発生している電力損失を1/20以下にまで低減することが可能になると同社では説明している。
今回開発した技術では、基板薄化と微細化、チャネル移動度の向上に加え、独自のダブルトレンチ構造の採用によって低オン抵抗と高耐圧の両立に成功した。
同社ではこれまでもトレンチ構造を採用したSiCトレンチMOSFETを開発していたが、SiCに期待されるオン抵抗値に対して依然として改善の余地があり、今回は基板の厚さを従来の350μmから100μmまで薄化することで基板抵抗を約70%低減、さらに微細化とチャネル移動度を2倍に向上することでチャネル抵抗を約80%低減することに成功、その結果、低オン抵抗化を達成した。
また、ゲートとソースにトレンチを形成する独自の電界緩和構造であるダブルトレンチ構造の採用により、トレンチ構造の弱点である高電圧時のトレンチ底部ゲート酸化膜破壊を克服することにも成功したという。
なお、同社では、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の1つとして位置付けており、すでに商用化しているDMOSFETやSBDのさらなる高耐圧化、大電流化製品のラインアップの強化に加え、SiCトレンチMOSFETやSiCデバイスを搭載したIPM(インテリジェント・パワー・モジュール)などSiC 関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めていく計画としている。