リコーは、自分が自由に描いた絵をデジタルデータとして取り込み、ほかの人が同様に描いた絵とともにレースができるアプリケーションソフト「紙レーサー」を12月3日~11日に東京ビッグサイトにて開催される「第42回 東京モーターショー」に出展することを発表した。また、併せて同アプリを搭載した専用機のテストマーケティングを自動車ディーラーや各種イベント会場向けに開始することも発表した。

同社では紙レーサーを新感覚の体験型アプリと銘打っている。具体的にどういったものか、ということを説明すると、QRコードや位置マーカーが記された用紙(同社では専用紙としているが、QRコードや位置マーカーの場所、絵をかく場所などのフォーマットさえあっていれば、その他のレイアウトは自由だという)の指定枠内に描いた絵(ペンはなんでも良いが、読み込む際にインク残りや用紙の裏写りなどの問題が起きるものもあるため、同社ではサクラのピグマックスを推奨品に指定している)を専用スキャナで取り込み、その配色や色の分布、形状、塗り方などの画像の特長を抽出・分析し、独自のアルゴリズムで処理することで、その絵にあった最高速度、加速力、グリップ力、燃料の4パラメータが決定され、最大4枚の絵でレースを行うというもの。

これが紙レーサーの専用紙。紙質はいたって普通の上質紙。この中央緑の枠内に走らせたい絵を自由に書く

コースは10以上用意されており、その中から1つを選んで3週(時計回り。絵は左を前面にすると、前に進んでいるように見える。右を前面にしてしまうと、バックで走っているように見えることになる)するレースとなっている。最大4枚の絵でレースとなっているが、もし1枚であっても、鳥や猫、牛など13種類の絵が用意されているので、それらと走ることが可能だ。

すでに用意されたサンプルによるレースの様子。1回のレースに最大4人まで参加が可能

ちなみにパラメータ決定のアルゴリズムに車体形状や空力特性といったものは一切関係ない。というのも、元々の開発コンセプトが同社の社会貢献活動の一環として始まった「紙アプリ」という取り組みにあたるもので、対象年齢も2歳から大人(メインターゲットは小学生)と、かなり年齢が低い子供も楽しめるよう配慮がなされている。「絵は、子供であっても写実的であるとかを基準に上手い下手という評価がされてしまうが、そうした評価が子供を絵嫌いにする原因の1つとなっている。視覚的に満足しないものでも、自由に描いた絵が、上手い下手という基準以外で評価される軸を提供したかった」ということで、大人が考えるような速いクルマの形状などは一切無視したアルゴリズムが採用されており、タイヤがあろうがなかろうが、クルマの形をしていようがいまいが、まったく関係はない。

専用スキャナで描いた絵を取り込み、アルゴリズムを処理する専用機を介してマシンデータとして反映される。重要なのは絵心という言葉から解き放たれた、思う存分描くという情熱を用紙に刻み込むこと。ちなみに、枠外にはみ出た部分は残念ながらスキャナが読み取れないため、尻切れとんぼ状態になってしまうので、情熱がほとばしりすぎて枠からはみ出てしまうと、ちょっと残念なマシンとして登録されてしまうので注意が必要だ

「初めに描いた絵がダメでも、描き足すことで性能が変わる。そうした描いて楽しむということを感じてもらいたい」と、描く楽しみのためのアトラクションであることもポイントである。そのため、レースそのものは3週といっているが30秒もあれば終わってしまうものになっており、メインは絵を描くという行為そのもので、レースとその結果はサブという位置づけだそうだ。

スキャナに読み込ませると、順番にレースカーとして登録される。車体レイアウトの右にある縦の棒線が各種のパラメータを示す

3、2、1、Goでいざレーススタート。ちなみに、何も描かないとどうなるか?、というと無色透明なレースカーが登録されることになる。が、それだと、まったくどこを走っているのかが分からないので、面白くもなんともないし、遅いので奇をてらっても、何も良いことはない

1位で走っているのは、とても一般的な自動車のイメージからかけ離れた「ハイブリモーカー」。車体形状がかなり似ている2種類が2位争いをしているのは、形状が似ていてパラメータにそれほど差が出ないためか?

と思いきや、という結果になるのもレースの楽しみ。見た目はシンプルだが、スキャナ、画像解析、画像処理など、リコーがこれまでオフィス機器などで培ってきた技術がこれでもか、というくらい詰め込まれている。実際に勝負ごととなってしまうと、大人でも勝てばうれしいし、負ければ悔しい

モーターショーに出展する意義

東京モーターショーへの出展の際には、各用紙にIDがナンバリングされ、リコーが用意した専用Webサイトにて一定期間それを見ることができる。また、各レースの1位だった絵には優勝を示すスタンプが押され、同意が得られた場合はコピーが会期中、ブースにて展示されるという。

また、実際にディーラーや自動車メーカー、イベンターなどがブースで見て、描いて、体験してもらって、受け入れられるということを確認したいという思惑もあるという。実際、今回のリリースに合わせて、同アプリをイベント会場やショールームなどで実際に活用するための機器などのレンタルサービス(有償)も開始されており、そうした活動の認知度向上といった側面もある。

すでに一部のディーラーや自動車メーカーなどで試験的に使ってもらっているとのことで、工場見学などのイベントなどでも活用してもらっているという。

なお、こういったコンセプトでもあることから、同社では、モーターショーに大人だけでなく、ぜひ子供も一緒に訪れてもらって、自動車と絵を描くことの両方を楽しんでもらえればとしている。

同社が貸し出し用に開発した第3世代の紙レーサーシステム。第1世代、第2世代はMFPがベースになっていたため、かなり大型でイベント主催側などからは小型なシステムが求められていたとのことで、そうしたニーズに対応するために専用機として小型化を図った。これからも改良されることが期待される。なお、東京モーターショーには同モデルのシステムが3機持ち込まれるそうである。同社では、子供達に楽しんでもらいたいとしているが、せっかくの機会なので、各出展ブース対抗などもやってもらいたいところである