東京工業大学(東工大)は、同大学術国際情報センター(GSIC)の青木尊之教授らの研究グループが、スーパーコンピュータの世界最大の国際学会 "ACM/IEEE Supercomputing 2011(SC11)において、その年にハードウェアとソフトウェアの開発において最高の成果をあげたプロジェクト及びそのメンバに付与される「ゴードンベル賞(ACM/IEEE Gordon Bell Prize)」の特別賞を受賞したことを発表した。特別賞は、ピーク賞に次ぐ極めて高い性能が得られたことに加えて、応用計算の分野で革新的な発展があった内容に送られる賞。

計算内容は合金の凝固過程において形成されるデンドライト(樹枝状結晶)をフェーズフィールド・モデルという理論で計算するもので、軽量高強度な新材料の開発などに貢献するものと期待されている。

空間を格子状に分割し、その格子点上で非線形な方程式を有限差分法で解く(格子法またはステンシル計算と呼ばれる)計算手法を用いているが、これまで格子法はプロセッサのピーク性能に対して高い実行性能(Flops)を引き出すことが難しいと言われてきた。今回、同研究グループではピーク性能2.4PFlops(倍精度)/4.8PFlops相当(単精度)のGPUを大量に導入した同大のスパコン「TSUBAME2.0」を用いて実行性能2.0PFlops(ピーク性能比44.5%)(単精度)を達成した。

TSUBAME 2.0の512GPU利用して4096×1024×4096格子で計算したAl-Si合金の凝固成長過程

すでに既報のとおり、SC11のGordon Bell賞では、理化学研究所(理研)などによる研究グループが「京」コンピュータを使った計算で「ピークパフォーマンス賞」を受賞しており、これによりTSUBAME2.0と合わせて、2002年の地球シミュレータ以来の日本が2つの本賞を独占した結果となった。

また、イタリアのThe National Research Council(CNR)とGSICとの共同チームがTSUBAME2.0を使った血流のシミュレーションもファイナリスト(25件の論文から5件が選出)となり、奨励賞(Honorable Mention)を受賞しており、TSUBAME2.0としてはダブル受賞となっている。

なお、同大では今後とも、TSUBAMEを使ってさらなる研究成果を上げるために、利用のサポートを続けて行くとしている。