グッと冷え込むようになった今日この頃。エアコンのスイッチを押そうとして、思い出すのは"節電"の二文字だ。

11月に入り、政府として、電力供給不足への対応を総合的に推進する「電力需給に関する検討会合」(座長 内閣官房長官)が、「今冬の電力需給対策」「エネルギー需給安定行動計画」の概要を発表した。

エアコンの使い方が異なる夏と冬とでは、効果的な節電方法が違うとも言われている。冬の節電対策は、生活や産業にどのような影響を及ぼすのだろうか。

夏の総括と冬の需給見通し

同検討会合は、電気事業法第27条に基づく使用制限をはじめとした今夏の節電対策について、「概ね目標とする数値で推移した」と発表している。今年の気温が高かった日を前年の同程度の気温の日と比べると、東京電力でマイナス19%、東北電力でマイナス18%、関西電力でマイナス8%の実績となり、東電・東北電管内の大口需要家においては「目標以上の節電が行われる傾向があった」という。前例のない大がかりな節電キャンペーンは、まずは成功を収めたと言ってよいだろう。

一方で、この節電が企業活動、特に産業部門に与えた影響は無視できない。生産抑制や稼働時間・曜日のシフトなど、コストをかけないと節電目標の達成が困難であったことが、教訓として挙げられている。

では、冬はどうなるのだろうか。一般的に冬の電力需要は夏に比べて低いことから、電力不足は「全国的に見れば、今夏ほど深刻とはならない」という見通しが示された。電力9社の来年1~2月期需給バランス見込みは、下記のようになっている。

(万kW) 北海道 東北 東京 中部 関西
1月 最大電力需要(見通し) 579 1,390 5,150 2,342 2,665
供給力 650 1,342 5,457 2,487 2,477
予備率(%) 12.3% -3.4% 6.0% 6.2% -7.1%
2月 最大電力需要(見通し) 563 1,370 5,150 2,432 2,665
供給力 649 1,364 5,375 2,487 2,412
予備率 15.3% -0.5% 4.4% 6.2% -9.5%
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(万kW)北陸 中国 四国 九州
1月 最大電力需要(見通し) 528 1,074 520 1,533
供給力 561 1,146 544 1,499
予備率(%) 6.2% 6.7% 4.6% -2.2%
2月 最大電力需要(見通し) 528 1,074 520 1,474
供給力 559 1,146 531 1,506
予備率 5.9% 6.7% 2.1% 2.2%

供給から需要を引いた数字「予備率」は、通常8%、最低限3%必要とされている。東京電力の予備率は1月6.0%、2月4.4%を確保しているのに対し、東北電力ではいずれもマイナスの見通し(12月も-5.3%の見込み)。また、関西電力で1月マイナス7.1%、2月マイナス9.5%、九州電力でも1月にマイナス2.2%と厳しい状況が予想されている。

これは、福島第一原発の事故以来、定期点検で運転停止した各社の原子力発電が再稼働していないことによるものだ。関西電力では発電量の約4割が原子力発電であり(2010年度電気事業連合会電力統計)、これが特に影響していると考えられる。

原子力発電所の運転状況がわかるサイト

今冬の節電要請の状況

こうした今冬の電力不足への対応について、同検討会合は「計画停電や電気の使用制限は行わない」ことを決定した。ただし、関西電力管内には前年同月比マイナス10%、九州電力管内は同じくマイナス5%という数値目標を伴う節電を要請。また、東日本エリアでは数値目標なしの一般的な節電を要請し、予備率がマイナスとなる東北電力へは東京電力・北海道電力からの融通でカバーする形となる。

数値目標が定められた関西・九州電力管内においても、「病院や鉄道などライフライン機能に支障が出る場合や生産活動に実質的な影響を及ぼす場合」は、影響の出ない範囲内で自主的に目標を定めることができる(ただし、その企業は事務や間接部門で共通目標以上の抑制を要請される)。夏の節電の教訓が生かされた部分と言えるだろう。併せて「被災地には配慮」することも明記されている。

電気を使う時間帯がポイント

では、節電を実施するにあたり、どのような取り組みが必要になるのだろうか。経済産業省が「節電アクション」として発表した、家庭向けの「冬期の節電メニュー」を見てみよう。

まず、夏の電力需要は平日日中に高いピークがあったのに対し、冬は朝に1回、日中は高めのまま推移し、夕方から夜にかけてもう1回ピークがある。夏の節電では日中の需要を朝夕や休日にシフトしたように、冬はさらに早朝・夜へのシフトが望まれる条件になっているわけだ。冬期の節電メニューでは、この時間帯における家庭での節電が重要だとしている。

企業の活動が終了する夕方以降は家庭における節電が重要になる

具体的な方法としては、「重ね着をして暖房は20度に」「照明をこまめに消す」「冷蔵庫を弱にする」などがあり、夏とあまり変わらない。重要なのは、電気を使う時間帯を意識することだ。

電力消費のピークを低くするには、「電子レンジや食器洗い機を使う時はエアコンを消す」、「乾燥機の使用中はドライヤーやアイロンを使わない」など、消費電力の多い機器を同時にオンにしないのが効果的である。家のブレーカーが少し小さくなったと考えてみるとわかりやすだろう。

東京電力管内からは、予備率がマイナスになる見込みの東北電力へ供給が融通される予定だ。政府から節電の要請は出ていないが、無理のない範囲で効率的なピークカット節電ができるよう、工夫していきたいものだ。