サイレックス・テクノロジーは11月11日、エンタープライズセキュリティ対応の省電力インテリジェントタイプ無線LANモジュール「SX-570」および「SX-580」を発表した。

2製品ともに、医療機器などでの組み込み実績があるSDIOタイプ無線LANモジュールシリーズの新製品であるIEEE 802.11b/g/n対応品「SX-SDMGN」およびIEEE 802.11a/b/g/n対応(Bluetooth3.0/4.0にも対応)品「SX-SDMAN」を無線部分に採用し、Freescale Semiconductorのi.MX28シリーズを搭載したCPUボードと組み合わせることでインテリジェント構造を実現している。

左がインテリジェントモジュール「SX-570/580」、右がSDIOタイプの無線LANモジュール「SX-SDMGN/MAN」

同CPUボードに、TCP/IPプロトコルスタック、無線ドライバ、IEEE 802.1Xセキュリティなどを搭載したことで、無線化に必要となる複雑な処理をすべて同ボード内で処理することで、無線組み込み開発で課題の1つとなるドライバ開発を不要にすることができるようになる。また、RADIUS、およびその他の認証サーバを使用してネットワークユーザを確認するエンタープライズクラスの無線セキュリティを標準で実装しており、企業などのセキュリティが求められる環境でも無線LAN環境を構築することが可能だ。

SX-570/580およびSX-SDMGN/MANの基本的な構成など

サイレックス・テクノロジー 製品戦略室プロダクトマネージャーの三浦暢彦氏

同社製品戦略室プロダクトマネージャーの三浦暢彦氏は、「我々はQualcomm Atherosの世界12社の無線製品開発プロフェッショナルパートナー1社であり、エンジニアレベルでの技術交流などを行うことで、無線LANに対する高い技術レベルを実現しており、モジュール製品の自社での設計・開発、生産を国内ですべて行っているほか、全数検査を行い、高品質な組み込み分野向け無線LANモジュールを実現している」と、現在の同社の無線LAN事業がこうした高品質を武器に、24時間365日、常に無線環境につながっていないといけないような幅広い業種・分野での活用が進められていることを強調する。

また、2011年より無線LANに対して新たな取り組みを開始したという。「無線LANはより遠く、より速く、より安全に、かつ簡単に実現することが求められるようになり、そしてそれらを実現するモジュールはより小型なものが求められるようになってきている」(同社業務執行役員 開発本部ワイヤレス技術開発部長の佐々木 勇治氏)。こうした要求に対応するために、今回のSX-SDMGN/MANもSDIOモジュールを実現している。「カード形状で提供すると、法律の関係上、モジュールレベルでの認証が必要となる。チップ形状でコネクタで接続することで、ユーザ側で好きなモジュールに搭載することが可能となり、何でも無線接続対応機器にすることが可能になる」(同)とする。

サイレックス・テクノロジー 業務執行役員 開発本部ワイヤレス技術開発部長の佐々木 勇治氏

「家庭での利用も、ブロードバンド回線に無線LANルータを接続するのが当たり前になっている。将来的にはすべての電化製品が無線LANに接続されるように意識が変化してきている。企業においても、TCOの削減という意味で、既存のタブレットなどを無線で接続して、配線コストなども含めて削減を使用という動きが見えてきている」(同)とするが、そうした中で、現場での接続性や安全性、実際の環境での動作検証の保障などの問題が生じるため、「アクセスポイント(AP)をメッシュ状に建物全体に同一SSIDを配置し、通信が切れないように自動的にローミングすることは昔からあるが、暗号の認証をAPが切り替わるごとに行っていると、その処理時間がかかって、通信切断などが生じやすい。我々としては、そういった問題をユーザと協力して解決する努力を行ってきており、それがエンタープライズレベルで使ってもらえることに結びついている」と、高品質であるが故に活用されているとする。

また、セキュリティの問題としても、「WEPの脆弱性が言われてきた。その問題に対応するためにEAP認証プロトコルによる方法が取り入れられるようになってきたが、標準が多すぎて、その技術を知らないと運用が複雑すぎる。また、プロセッサにパワーがなければ、計算処理に時間がかかる。そうした問題に対し、何をどの程度の処理性能で実現すれば良いかなどのコンサルティングを行っており、単にモジュールを提供するだけでなく、そうした面での品質保証も実現しているのが強み」としており、こうした複雑な開発をしないで簡単にエンタープライズクラスのセキュリティを実現することができるのがインテリジェントモジュールであるとした。

SX-570/580の概要

なお、SX-SDMGN/MANともにすでにサンプル出荷を開始しており、2011年第4四半期中の量産出荷を予定している。また、SX-570/580は、同第4四半期のサンプル出荷ならびに2012年春からの量産出荷を予定しているほか、Freescaleが出しているi.Mx53を搭載した評価キットにSDIOモジュールを接続する形の評価キットを5万円程度で12月中に提供する予定としている。

SX-SDMGN/MANの概要

また、標準はLinux向けドライバだが、12月中にはAndroid 2.3対応ドライバを提供する予定とするほか、Wi-Fi Directに対するサプリカントも2012年第1四半期中に提供するとしており、アクセスポイントがさまざまな場面で必要になってきている現状を踏まえると、コンシューマ機器では対応しづらいミッションクリティカルな分野などへのニーズなどに対応できる無線LAN機器の提供も将来的に行っていきたいとしている。