あらゆるモノや活動を対象とした「2011年度グッドデザイン賞」の選出式典が9日、都内にて開催された。大賞は、投票数11,061票のうち2,920票という得票数を獲得した本田技研工業(以下、ホンダ)の「カーナビゲーションシステムによる情報提供サービス」に決定した。ホンダが同賞大賞を受賞するのは、1984年の「シビック3ドアハッチバック25i」以来、2度目だ。
今回大賞を受賞した「Hondaのカーナビゲーションシステム『インターナビ』による、クルマの走行データを用いた情報サービスと、東日本大震災での移動支援の取り組み」について、同賞審査委員は「独自に進めていた双方向通信型カーナビによる通行実績情報が、大震災時に応用できると誰が予測しただろう」と驚きを口にした。また、「この実績をもとに、世界の震災時にも役立てられるように展開してほしい。長年の企業努力と震災後のサービス提供に対して、担当した審査委員一同は最も高い評価をした」などとコメントしている。
ホンダならではの「走行データ」を素早く公開
ホンダは1981年から独自のカーナビを開発。カーナビに携帯電話などの通信を融合させた双方向通信型「インターナビ」を2002年に登場させ、よりスムーズなルートを案内するために、2003年から会員同士の走行データを共有するというフローティングカー交通情報システムを世界で初めて実用化した。
このシステムによって集められた会員の走行実績データは、2007年の新潟県中越沖地震および、2008年の岩手・宮城内陸地震でも役立てられていたという。
そして、3月11日に発生した東日本大震災。岩手・宮城・福島の道路が寸断されたことを把握した同社は、地震発生時から当日の24時までに収集した走行実績データをオープンフォーマットでWEB上に公開した。公開したのは、地震発生の翌日、12日の10時30分であった。
さらに14日には、Googleが提供する「自動車通行実績情報マップ」に情報が提供され、前日に通行実績のある道路は青のラインでビジュアル化。これらの情報は防災研究機関や大学などにも活用され、災害復旧などにも貢献することとなった。さらに翌月の4月には、自動車通行実績情報に加え、被災地でスムーズに移動できるよう渋滞実績情報も表示されるようになったという。
同社のインターナビ事業室室長・今井武氏は、当時の状況や気持を受賞後のコメントでこのように振り返った。「正直、無我夢中にやってきたので、こんな大きな賞をいただけるとは、今日この時点までまったく考えもしなかった。地震発生直後、この通行実績マップをとにかく早く公開しなくてはという気持ちで徹夜で取り組んだ。通行実績マップは、我々の想いとインターナビ会員140万人の協力のもとでできあがったもの。人とクルマ、クルマと社会が結びついた、新しい"つながるクルマ"のデザインだ」
また、今井氏は大賞発表前のプレゼンテーションでこう述べていた。「創業者が残してくれた言葉『人の役に立ちたい、使って便利で楽しいものを提供したい』。この言葉を肝に銘じて商品開発に携わりたい」。2011年度グッドデザイン賞は、ホンダの創業時からの原点と、140万人のユーザによる"合作"が大賞を獲得したといえよう。