昨年度に比べてクラウドへの認知度向上を実感

スターティア 取締役 兼 常務執行役員 古川征且氏

10月26日から28日にかけて「2011 Japan IT Week 秋」が幕張メッセで開催された。同カンファレンスでは、クラウドコンピューティング、情報セキュリティ、Web&モバイルマーケティング、スマートフォン&モバイルと、現在注目が集まっている分野のエキスポ4つが併催され、数多くの来場者が詰めかけた。

スターティアもクラウドコンピューティングEXPOに出展した1社だ。同社の展示会場では、中堅・中小企業向けのクラウドサービス「デジタリンク クラウド」とオンラインストレージ「セキュアSAMBA」の紹介が行われた。デジタリンク クラウドを紹介するブースでは、訪れた人々とのコミュニケーションの中で実際の中堅・中小企業のクラウド利用に関する意識の変化が感じられたという。

スターティア ネットワークソリューション営業部1課マネージャーの橋本慶氏

取締役 兼 常務執行役員を務める古川征且氏は、「1年前は、クラウドコンピューティングの概念の説明から始まりましたが、今年はクラウドの活用に関する質問が中心です」と語る。

また、「クラウドに対する意識が変わってきているのがわかります」と会場で来場者応対をした感想を語るのは、ネットワークソリューション営業部1課マネージャーの橋本慶氏だ。

「以前は、『クラウドって何なの?』といった質問が多かったのですが、今回は『クラウドでこういうことがしたいけれどできるか』、『こういうことを目的にしているけれどスターティアはどういう対応をしてくれるのか』など、具体的な質問が多かったです」と橋本氏は振り返る。

クラウドというキーワードが盛り上がり、もてはやされているのがここ数年の傾向だったが、その内容に踏み込んで理解している企業が少ないというのが実情だった。特に情報システム部門の担当者ではなく経営層は、クラウドって「便利らしい」「安くなるらしい」とった漠然と理解しているケースが少なくなかった。

しかし、今年はクラウドサービスがある程度広がり、また震災後に緊急導入した企業なども増えたせいか、より具体的な理解を持っている質問が増えたという。

クラウドコンピューティングEXPOのスターティアのブースの様子

情報を集めつつ具体的な導入計画の段階にある企業が多数

クラウドEXPOの会期中、スターティアのブースではクラウド利用に関するアンケートを実施していた。名刺とアンケートを出すことでノベルティを配布しているブースは数多くあったが、スターティアが配布していたのは2011年夏の時点で顧客企業からヒアリングしてまとめた「中小企業にクラウドサービスは有効か!?」をテーマにした、クラウド意識調査レポートだ。

「情報を求めている方が多いのでしょう。交換でお渡ししていますと言うと、アンケートにも名刺交換にもスムーズに応じていただけます」と橋本氏。

アンケートでは業種などの簡単な企業データのほかは、クラウドの利用状況に絞った質問がされている。すでにクラウドを導入している企業に対してはどんな面で利用しているのかを問い、未導入の企業に対しては導入しない理由を問う。このアンケート結果は、会期中のブースで逐次更新掲載された。

クラウド導入済みの企業を対象にサーバの用途を尋ねたところ、「メールサーバ」が最も多く、これに「業務アプリケーション」という回答が続いた。また、クラウドを導入していない企業にその理由を尋ねたところ、「セキュリティが心配」という回答が最も多かった。詳細は同社がレポートとしてまとめる予定なので、そちらで確認されたい。アンケートに協力した人にはもれなくレポートが送付される。

ブースに立ち寄った人を対象に実施したアンケート「中小企業にクラウドサービスは有効か!?」はリアルタイムで結果が更新されていた

「クラウドの導入済みと未導入の企業の割合はほぼ半々です。未導入の企業もよく勉強されていて突っ込んだ質問も受けましたし、運用保守について、『どんなことをしてくれるのか』『トータルでいくらになるのか』など、導入後に重点を置いた質問もありました」と橋本氏は語る。

以前は情報システム部門がソリューションの選定を行い、ベンダーが一緒に経営層を説得するというスタイルが一般的だったが、今回は経営層と情報システム部門の人間が連れ立って来訪している企業、経営層が先に選定を行って翌日に情報システム部門担当者が訪れるというようなトップダウン型の企業もあったという。

「クラウドが注目された当初の『とにかく今より安くなるだろう』、『どれだけ安くなるんだ』というような、コスト面で話をする人は少なくなりましたね」と語る古川氏は「経営者にとって、投資対象から必要なツールへとクラウドのイメージが変化しています」とも指摘する。

オンプレミス(自社運用)と同程度のコストがかかることや、セキュリティや運用保守といったクラウドサービス導入にあたっての注目ポイントなども周知されてきていることがわかった。

アプリケーションパートナーとより強固なサービスを構築

クラウドの有用性は伝わり、導入への意欲も高まっている企業が求めているのは、「スムーズな導入」や「手堅い運用や的確な保守」など、使い続けることへのサポートだ。クラウドサービスを提供するだけでなく、社内システムをクラウド環境へと移行させるためのSI業務も行う「デジタリンク クラウド」は、正にこうした企業のニーズに合致している。

「企業の方々からは、『できれば、今の環境を変えることなくクラウドに移行でしたい』という意見を耳にします。エンドユーザーには変化を感じさせることなく、環境はクラウドに移行したいということですね。さすがにまったく同じ環境は難しいでしょうが、われわれはできる限り快適な移行をサポートしたいと考えています」と古川氏は語る。

そんな「デジタリンク クラウド」が現在注力しているのが、アプリケーションパートナーの獲得だ。「デジタリンク クラウド」というプラットフォームの上でさまざまなアプリケーションを稼働させられる状態にすることで、ユーザーの選択肢を増やしたいという。

「複数のアプリケーションを組み合わせたパッケージを作ることができれば、さらにお客様へのが提案がしやすくなります。現在はERPや業務系のパートナーを探しているところです」と古川氏。スターティアは今後も中堅・中小企業の強い味方になるべく、成長を目指す。