パナソニック子会社のパナソニック環境エンジニアリングは、電子デバイス工場の生産プロセス工程の洗浄などで使用されるプロセス薬液のリサイクル技術を確立したことを発表した。
電子デバイス工場の生産プロセスでは、洗浄・剥離工程などの製造過程でプロセス薬液を大量に使用する。従来、その廃液は産業廃棄物として廃却されるか、費用をかけて薬液成分のみ生物処理などで除去処理するか、もしくは専用の処理場で再生されていた。
同社では環境負荷の低減および製造コストの低減などを目指し、使用済みの生産プロセス薬液を、沸点の違いを利用して分離精製回収する技術を開発してきており、今回はさらに高度な蒸留分離技術を開発し、新たに開発した調合供給技術と組み合わせることで、薬液リサイクル技術として確立したという。
蒸留分離技術は、原液に加えて重金属や樹脂、水分など様々な不純物が混じっている使用済みのプロセス薬液に対し、それらの不純物を、沸点の違いを利用して蒸留分離するもの。従来技術では薬液2成分の蒸留分離技術だったが、今回開発した技術は3~4成分の蒸留分離技術であるため、より広範囲な生産プロセス薬液への適用が可能となった。使用する装置は、蒸留塔、循環ポンプ、コンデンサ、排水タンク、真空ポンプ、流下膜式濃縮装置、再生液貯留槽などで構成され、工場内の廃液処理ヤードと薬液供給装置の間に設置して利用される。
一方の調合供給技術は、生産プロセスからの廃液をリサイクルする上で、複数薬液成分があった場合にその比率を新液レベルと同等とするべく、不足薬液成分のみを調合して供給する技術。装置は、廃液中の薬液成分濃度センサ類、調合設備、供給設備などで構成される。
これらの技術を組み合わせることで、工場内で効率的に生産プロセス薬液の再利用が可能となり、廃液から約70~95%の再利用可能な薬液の回収が可能となり、30%以上の工場ランニングコスト削減と70%以上の環境負荷低減が実現可能になるとうい。
なお同社では、世界的に生産が拡大している電子デバイス工場の製品コストの低減、環境負荷低減面での潜在ニーズは大きく、今後はこの分野での事業を東南アジアのデバイス工場を中心にグローバルに展開し、2015年度で50億円の売り上げを目指すとしている。