東北大学(東北大)の研究チームは、高血圧症や動脈硬化によって起こる腎臓障害のメカニズムを解明したことを発表した。同成果は東北大学大学院医学系研究科中心血圧研究寄附講座の橋本潤一郎准教授と、腎・高血圧・内分泌学分野 伊藤貞嘉教授らによるもので、米国心臓協会雑誌「Hypertension 11月号」に掲載される予定。

現在広く用いられている一般的な血圧測定は、1世紀以上前にリバロッチ・コロトコフ氏によって発明された上腕カフ血圧測定法に基づいている。しかし最近では、手首で脈の波形を記録することで、心臓や脳、腎臓のような主要臓器に作動する大動脈の血圧(中心血圧)を推定する新たな方法が開発されている。

中心血圧は、従来の上腕で測定した血圧とは異なることが知られており、高血圧や動脈硬化によって生じる臓器障害の程度をより鋭敏に反映する新規の血圧指標であることが推測されていた。

今回の研究では、高血圧症の患者を対象に中心血圧を調べ、その最大血圧と最小血圧の差(脈圧)が大きいほど腎臓内部での血流の拍動変化が大きくなるとともに、微量アルブミンの排泄量が増え、腎臓内の微小血管が障害されやすくなることを発見した。

これは、中心血圧の測定が腎臓障害の早期発見や早期治療に有益であることを示唆しており、今後の高血圧診療において中心血圧が活用されるものと期待されるという。