日立製作所は、風力発電システムの軽量化と建設時の作業負荷の低減などを実現するため、2,000kW級風力発電用の永久磁石発電機の小型・軽量化技術を開発した。今回開発された技術は、10月26日から27日に長崎大学で開催される電気学会回転機研究会で紹介される予定。

近年、地球温暖化や資源価格高騰の対策として、再生可能エネルギーである風力発電などの導入量が世界的に拡大している。

現在運用されている1,000~3,000kWクラスの風力発電システムでは、回転子に駆動電力を供給しながら風車を回転させて発電する「巻線形誘導発電機」が主に使用されているが、回転子への電力供給が不要な永久磁石を活用した「永久磁石発電機」への期待が高まっている。

また、風力発電用の発電機は、地上数10m~100m超の高さに設置されるため、システムの軽量化と建設時の作業負荷の低減など、小型・軽量化の実現も求められている。

こうした背景から日立は、次の2つの技術を開発した。

1. 高冷却回転子構造

通常、永久磁石発電機の回転子は円筒形状だが、今回開発した高冷却回転子構造は、永久磁石のN極とS極の磁極間に冷却用通風溝を設けることで、冷却風量を増加させ、発電機内部まで適切に冷却風を配分。これにより、回転子内の永久磁石を効率的に冷却することが可能に。また、通風溝は、永久磁石の発熱(磁石損失)を増加させる磁束を低減する効果があるため、発電機の小型・軽量化とともに高効率化も実現した。

2. 発電機設計技術

永久磁石発電機は、電気特性だけではなく、永久磁石やコイルなどの各部位の温度上昇や回転子の機械強度に対して、技術的な制限値を満たす設計が求められる。このため、電磁界解析・応力解析・熱流体解析を活用した一元化設計技術を開発した。この設計技術を適用することで、磁石配置や冷却用通風溝寸法の最適化が容易となり、小型・軽量かつ高効率な発電機の設計が可能となった。

これらの技術による2,000kW級永久磁石発電機を試作・検証した結果、現在風力発電用として主に導入されている巻線形誘導発電機(2,000kW級)と同レベルの発電効率(97%以上)を保ちつつ、約30%の重量低減達成を確認できたという。

今回開発された2,000kW級永久磁石発電機用の高冷却回転子。通風溝により内部の永久磁石の効率的な冷却を実現