大きく3種類に分類できるスペースデブリ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月21日、スペースデブリ(宇宙ゴミ)に関する説明会を開催した。
9月末の上層大気調査衛星「UARS」や10月22-23日に落下するであろうX線天文観測衛星「ROSAT」など、超大型のスペースデブリが取りざたされているが、デブリの種類は大きく分けて3種類に分けられる。
1つ目は「ミッション終了後の宇宙システム」で、いわゆるミッション終了後の人工衛星やロケット。2つ目は「Mission-related」。運用上やむを得ず発生するゴミで、最近はデブリの発生を抑制するために改良が施されているが、カメラを覆っていたフードやロケットと衛星を結合していたクランプバンドなどを指す。そして3つ目は「破片(Fragmentation)」。これが発生するには、いくつかの理由がある。例えば、軌道上での爆砕による破片や、衛星の表面の経年劣化による表面ペイントのはがれなども含まれる。
デブリの数は年々増加しており、現在、JAXAなどの各国宇宙機関が確認しているデブリなどの宇宙を浮遊する物体は約2万個。その内、2011年2月1日時点で、出自が分かっているデブリは1万6852個。「前述した総数約2万個と3-4000個のかい離があるが、この3-4000個のデブリは、どこでどの衛星やロケットから発生したか不明、もしくは機密事項である軍事衛星から発生したもので、約1万7000個のうち、42%が破砕破片、23%が運用を終えて放棄された衛星、17%が衛星から分離され、宇宙空間を残されたロケット機体、12%が運用上衛星などから分離された部品で、実際に運用中の衛星は6%にしかすぎない」とJAXA未踏技術研究センターの木部勢至朗氏は解説する。
最大割合の破砕破片だが、その大半がロケットの爆発により発生しており、これは平均して年4回生じているという。現在は、ロケット打ち上げ後、衛星を軌道投入後、残存燃料を宇宙に放出するよう対処を施しているが、そうした対処が施されておらず燃料が残存したままの、古いロケットも多く存在しており、そうしたロケットが爆発して、デブリを増やす要因の1つとなっている。
デブリの増加により、さらにデブリが増加する負のスパイラル
デブリが増加すると、何が問題となるのか。過去、デブリが急増した時期が多々ある。近年の代表的な例としては、2007年に中国が行った弾道ミサイルを転用したAnti-satellite weapon(ASAT)の実験による人工衛星の破壊や、2009年のIridium Sateliteのイリジウム33号とロシア宇宙軍のコスモス2251号の人工衛星衝突事故などが挙げられるが、ポイントはこの後者の人工衛星同士の衝突にある。
「衛星同士の衝突は、その後の宇宙開発に壊滅的な結果を招く危険性が高い」(同)とするが、その実、現状のデブリの数からすると、運用中であろうと運用が終了したものであろうと、衛星同士の衝突は5年に1回の割合で生じるという計算結果が出ており、こうした衝突事故は、今後、かなりの頻度で発生する可能性が高いと同氏は指摘する。
デブリの増加により、デブリ同士の衝突する可能性が高まり、その結果、デブリがデブリを生み出す、いわゆる「ケスラーシンドローム(Kessler Syndrome)」が生じることとなる。
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仮に、宇宙開発を今後行わなければ、デブリは減るのか?、NASAのLEGEND(a LEO-to-GEO Environment Debris model)が出した2005年での結果を見ると、最初は小康状態を保つが、その後、増加傾向にやはりなってしまうというシミュレーション結果を出している。これは、衛星や運用上で出るデブリは減るが、衝突で生じるデブリが増加していくことを示している。2005年のデブリの数でそうした結果がでていることを踏まえると、2011年10月時点のデブリ数で考えると、さらにひどい状態になることがうかがい知れる。