慶應義塾大学は10月19日、同大矢上キャンパスにて、「Workshop on Scientific Matlab Computing 2011」を開催した。
同イベントは、当初2011年6月に開催を予定していたものだが、3月11日に発生した東日本大震災の影響から延期になっていたもの。基調講演は当初からMathWorksの創業者の1人で同社会長兼Chief ScientistであるCleve Moler氏が行うことが予定されていたが、同震災の影響で延期が決定された後も、来日の意欲を示しており、大学側もその意向を受けて開催を決定したという。
同氏の講演タイトルは「The Origin and Evolution ofMATLAB」と題したもので、MathWorksそしてMATLABがどのようにして生まれたのかを1950年代の計算機の話から、これまでのトピックスを踏まえて振り返った。
MathWorksそのものは1984年に設立されたが、同氏は同社の設立以前、ミシガン大学やスタンフォード大学などで数学やコンピュータサイエンスの教員として教鞭をとっていたほか、現在ではスーパーコンピュータの性能ランキングTop500で用いられるLINPACKやEISPACKのサブルーチンライブラリを書いた1人でもある。
左の写真はLINPACKの開発者4名(左からJack Dongarra氏、Cleve Moler氏、Pete Stewart氏、Jim Bunch氏)の当時(1979年)のもの。右は2011年現在の4名の写真 |
MATLABの最初期は、現在のMATLABで見られるToolboxなどの拡張された部分はなく、非常にシンプルな機能のみで、数式を入れ、その結果を行列やグラフで表すといったものであった。その後20年以上の時間をかけて、さまざまな機能などを加えて発展を遂げてきた。元々のMATLABはMATrix LABoratoryの略で、Fortranを学生が学ぶことなくLINPACKやEISPACKにアクセスできることを目指して開発された。「MATLABのエッセンスは、アレイベースのプログラミング言語で、計算結果やグラフなどを表示するもの」とのことだが、面白いところではスタートレックの1シーンにもMATLABで作った3次元波形が使われたこともあるという。
現在の主な適用分野は科学演算であり、産業用途として自動車や半導体、金融などの幅広い分野で活用されるようになっている。
また、早くから並列コンピュータへの対応に向けた開発も進めており、複数のコンピュータを活用することで演算能力を少ない電力でいかに向上させるかに対する取り組みなども進めてきており、現在、そうした並列コンピューティングによる演算性能向上としてマルチコアとGPUやFPGAなどを用いたアクセラレータの活用が進むようになってきた。
「MATLABの進化は今後も止まることはない」というのが同氏で強調するところで、さまざまなシーンへの適用に向けた取り組みも進められており、今後、より幅広い分野でのMATLAB/Simulinkの活用を目指した開発を続けていきたいとした。