富士通研究所は9月26日、「資源プール化アーキテクチャ」を用いた次世代サーバの試作に成功したことを発表した。同アーキテクチャにより、CPUやHDDなどのハードウェア部品をプール化し、それらを高速インタコネクトで接続することで、ハードウェアの機能や性能を損なわずにサーバやストレージをニーズに合わせて柔軟に提供できるようになるという。
データセンターでは多数のサーバとストレージをネットワークで接続し、ICTインフラを構築。その多くがWebサービスなどのクラウド向けサービスの提供に用いられているが、クラウドサービスの多様化にともない、高いI/O性能が必要とされるデータベースやサーバのローカルディスクを活用する大規模データ処理など、従来のクラウド向けシステム構成では要求性能を満たすことが難しくなっており、さらなる性能向上と柔軟なシステム構築が求められていた。
今回の「資源プール化アーキテクチャ」は、CPUやHDDを高速インタコネクトで結合することで、ローカルディスクを備えたサーバとしてもストレージ機能を搭載したシステムとしても構成可能な技術。スケールアウト技術を前提にサーバやネットワーク、ミドルウェア、ファシリティを融合することで、全体システムでの最適化を図り、TCOの削減およびPUEの低減を図ったものとなっている。
5つの基本的な考え方(「資源プール化」「ハードウェアのミドル化」「コモデティ活用 新技術への挑戦」「ファシリティ融合」「統合管理」)を元に、以下の3点の技術を中心に開発が行われた。
- プール管理機構
- プールから切り出したサーバ上に、ストレージ機構を提供するミドルウェア
- ディスクプールを接続する高速インタコネクト
今回のサーバの開発コンセプトと資源プール化アーキテクチャの概要。仮想化環境での「プール化」はよく知られた話だが、物理的な「プール化」を今回は行うことで、システムの柔軟性と遅延の抑制などの性能面の両立を実現した |
プールの管理機構は、利用者が必要とするCPU数、HDD数などの要件に応じて、プールから要件にあった資源切り出しと、OSおよびミドルウェアの配備を行い、必要とされる構成のサーバをオンデマンドで構築するもの。これで構築されたサーバ上に、HDD管理とデータ管理とを行うミドルウェアを構成することで、自由に容量を変更可能なストレージ機能が提供される、これにより、大規模データ処理向けの大容量ローカルディスクサーバやRAIDなどの機能を性能や消費電力などの、さまざまな要件でも同一システム上でそれに対応したシステムを柔軟に構成することができるようになるという。
また、今回、新たに開発した6Gbpsのインタコネクト「ディスクエリアネットワーク」を用いてディスクプールとCPUプールの任意のCPUとHDDを接続することで、通常のサーバのローカルディスクと同じディスクアクセス性能を実現しつつ、ほかのCPUからの性能面の影響を受けずにディスクエリアネットワークを実現することが可能になるという。このため、通常のサーバのローカルディスクと同等性能をどのHDDに対しても実現することが可能となったほか、CPU間の通信遅延も生じずに処理を行うことが可能になったという。
富士通研究所 取締役 ITシステム研究所長 兼 次世代テクニカルコンピューティング開発本部技師長の久門耕一氏 |
これらの技術は物理的にHDDとCPUが接続されるため、一般的な仮想化レイヤが不要とない(管理レイヤは必要)。その結果、データのオーバヘッドを減らすことができるようになり、遅延を減らすことが可能になるという。また、システムの構成切り替え時間に関しても、「RAID構成のオン/オフの切り替えで数秒程度、システムが異常を検知しない程度の時間で変更することが可能」(富士通研究所 取締役 ITシステム研究所長 兼 次世代テクニカルコンピューティング開発本部技師長の久門耕一氏)と、リアルタイムまで高速とは行かないまでも、気になるレベルまで遅い、というわけではないとしている。
実際に試作した次世代サーバを用いて性能評価を行ったところ、Iometerによりブロックアクセスの相対域を産出するというI/Oベンチマークで、従来システム比約4倍の性能と、Hadoop上でのSort実行で同約40%の性能向上が確認されたという。
同社では今回の試作機は、実用化などの検討に向けたもので、今後、運用面での自動化などをどう行っていくか、スケールアウトをどういった状況でどの程度といった仕組みをどのようにして自動化するか、といった研究などで活用していく予定で、2012年度に富士通研究所内の試験用サーバとして立ち上げる計画としている。