Windows Internet Explorer 10

Windows 8デベロッパープレビューには2種類のIE10 PP3が搭載されていることに気がついたはずだ。ひとつはデスクトップで利用する「IE9とよく似たブラウザ」、もうひとつはスタート画面から直接起動する「タブレット向けのブラウザ」。後者は「Metroスタイルのブラウジング」と呼ばれている。

Windows 8デベロッパープレビューに搭載されているIE10 PP3は、単一のHTML5エンジンに対して2つのUIを提供している。つまり、先程の2つのブラウザはレンダリングやセキュリティなど内部機能は同一で、UIだけが違ったものになっている。今回新しく追加されたMetroスタイルは主にタブレットデバイスやスマートフォンを想定したものだが、MicrosoftはデスクトップにおいてもMetroスタイルは有益であると考えているようだ。

Metroスタイルで動作しているIE10 PP3。コンテンツ表示領域以外のUIが表示されていない点に注目。

タブ、ナビゲーションボタン、アドレスバー、再読み込み、新規ページ、新規タブ、ピン留めのUIは必要に応じて表示される。

ピン留めしたページが空のページに表示される。

アドレス入力は補完されるとともに、候補も表示される。

ポップアップするメニューも必要最小限なもののみ。デザインもMetroスタイルに統一されている。

Metroのスタート画面にピン留めしたページが追加される。

IE9と類似したデスクトップ版のIE10 PP3は、従来のブラウザのデザインコンセプトを推し進めたものとなっており、最小限のUIと最大限のコンテンツ表示領域というスタンスを持っている。それでもMetroスタイルと比較すると常に制御用のUIを意識する作りになっており、あくまでも従来のデザインの改良版であることがわかる。

従来のIE9と同じデスクトップ向けのIE10 PP3

F11でフルスクリーン表示に切り替えたとしてもベースデザインはIE9と同じであり、Metroスタイルとは根本的に別デザインであることがわかる。

こうしたまったく異なるユーザ体験をデザインとして提供するブラウザとしてはFirefoxがかなり近い存在といえる。デスクトップ向けのFirefoxとタブレット向けのFirefoxはそのデザインを大胆に変更している。IE10 PP3のデスクトップ向けとMetroスタイルもこの関係に近い。

ここで注目すべきは、Microsoftはこの2つのUIデザインをまったく別用途として考えているのではなく、将来的にはデスクトップを使うユーザの多くがMetroスタイルのブラウジングを便利なものだと捉えるようになるだろう、と推測している点にある。

現在のユーザはスマートフォンやタブレットデバイスを通じて、枠や制御用のUIが表示されていないブラウザを使うことに慣れている。視覚的に、そして直感的に操作することを日常的に行なっている。このため、デスクトップにおいても枠や制御用UIの表示されないブラウザを使うことに抵抗感がないというのが理由だ。現在提供されているMetroスタイルのIE10 PP3は開発者向けのもので、最終的にはまったく別物になる可能性もある。しかし、別物として想定されているのではなく、従来のスタイルからの移行も考慮した本気度の高い取り組みと位置付けていることは注目に値する。