物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の川喜多仁MANA研究者と知京豊裕主任研究者らの研究グループは、既存の技術に比べて10倍以上の成長速度で形成可能なエレクトロニクス用導電性配線材料を開発したことを明らかにした。同成果は、9月21日の表面技術協会秋季講演大会および9月22日の産学官連携推進会議において発表される。
エレクトロニクス分野、特に集積回路では高集積化の手段として3次元的にデバイスを積層する取り組みが進められており、多層配線と縦方向の配線をいかに作製するかが課題になっている。
また、フレキシブルデバイスでも高集積化に伴う多層配線の必要性が出てきており、新しい高導電性配線材料が求められている。現在は主にCVDやめっき技術を用いてタングステンや銅を用いて配線が形成されているが、これらの金属を使う配線作製技術では、複雑な準備工程が必要なことや形成速度が低いことなどの理由のため、形成に数時間を要することがあり、エレクトロニクス構成部品の生産コストが高くなる要因になっていた。
今回の研究では、導電性有機ポリマーと金属から構成される導電材料を既存の技術の10倍以上の成長速度で形成することに成功した。
形成に際しては、導電性有機ポリマーの原料となるピロールなどのモノマーと、導電性を発現するためのドーピングアニオン、銀などの金属のカチオンを、アセトニトリルなどの溶媒に溶解した溶液に、紫外光などの光を照射した。
光アシスト効果により、導電性有機ポリマーの重合反応と金属の析出反応を同時に促進することが確認されたという。なお、得られた材料の導電率は5.5×103Ω-1cm-1で、金属と同等であったという。
3次元積層チップの実現には、積層したシリコンチップ間をつなぐ配線として、チップ間を垂直に貫通する電極(TSV)を作製する技術が重要だが、その技術課題の1つとして、細く深い孔を導電性の高い材料で速く充填することが求められる。研究グループでは、今回の技術を用いることで、液体状態での原料の高速注入とその後の導電材料の高速形成が可能となることから、従来は数時間かかっていたTSVへの導電材料の充填時間が、数分間にまで短縮されることが期待できると説明している。