トヨタグループの豊田中央研究所は9月20日、太陽光エネルギーを利用して水と二酸化炭素(CO2)のみを原料にして有機物を合成する人工光合成の実証に、成功したと発表した。今回の研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」電子版に掲載された。

人工光合成は、CO2排出による地球温暖化問題、化石燃料の枯渇による代替えエネルギー問題などを抜本的に解決できる手段の1つとして、近年その関心が高くなっており、さまざまな研究が行われている最中だ。

しかし、植物が行っているような水とCO2と太陽光のみで有機物を合成することは実現していない。従来は「犠牲薬と呼ばれる有機物を添加する」、「太陽光には含まれない波長域の紫外線を利用する」、「外部から電気エネルギーを加える」といった自然にはない負荷的要素を必要としていたが、今回の研究では、水とCO2と太陽光のみで有機物の合成に成功した。

今回の技術は、「水から電子を抽出する酸化反応」と「抽出した電子でCO2を還元して有機物を合成する還元反応」を組み合わせ、それを光エネルギーで促進させるというものだ(画像1)。

画像1。人工光合成の概念図。水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から、ギ酸(HCOOH)を作り上げる

研究チームは、半導体と「金属錯体」から構成される新しいコンセプトの「CO2還元光触媒」を開発(画像2)。同触媒、および水を酸化分解して電子を抽出する光触媒を、「プロトン交換膜」を介して組み合わせることで、太陽光を利用して有機物であるギ酸(HCOOH)を合成することを実証した。

画像2。画像1の右側の「CO2還元光触媒」とその機能。CO2と2H+と2e-を還元反応でHCOOHにする仕組み

今回は原理の実証を行った段階であり、同技術の実用化にはまだ多くの研究課題が残っているという。今回の方式による太陽光エネルギー変換効率は現在のところ0.04%であり、一般的な植物の光合成の効率と比べるとわずか1/5程度となっている。

今後、研究チームは植物を超える効率の実現と、メタノールなどのより付加価値が高い有機物の合成技術の実現に取り組む予定だ。