9月3日・4日の2日間にわたり、静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」において、第50回日本SF大会「ドンブラコンエル」の共催イベントとして、日本中のほぼすべての2足歩行のホビーロボットイベントを集めた「ホビーロボットコロッセオ」が開催された。大会に参加したホビーロボットユーザー(オペレーター、ビルダー)は45名以上、ロボット数で70台以上となった(画像1)。

画像1。開会式のロボット集合写真。1人で複数台を持ち込んでいる人も多いためにすべての機体が並んでいないが、これだけのホビーロボットが並ぶのは年に何度もない。ちなみに、真ん中の巫女さんロボットは「アマテラス」。関西のイベントでは事故のないように祈願しており、今回は静岡まで出張してきた

北は山形県長井市の「ナガレンジャーファイティングフェスタ」の「ロボットかるた」(画像2)から南は九州の「YOKAロボ」の「ミニマムロボットバトル」や「ブレーザー」(画像3)まで、普段は各地で地元のロボットショップや有志、ロボット関連企業などが開催している一般のホビーロボットユーザーが参加できるイベントで、全部で10以上が集合。2日間にわたって盛りだくさんの内容となった。

画像2。定期的に開催されている2足歩行ロボットの競技会としては、今のところ最も北に位置する「ナガレンジャーファイティングフェスタ」の競技の1つ「ロボットかるた」。妨害もありの武闘派? かるただ

画像3。九州「YOKAロボ」勢は2つの競技を披露。1つが、この「ブレーザー」だ。スモークがないので見えないが、赤外線レーザーを使って、撃ち合っている。懐かしい例えだが、ロボット板「サバイバーショット」もしくは「ジリオン」だ

競技の内容は、普段各地で行われているイベントの中から、代表的なものをピックアップして1つから4つを実施。種類としては、一般参加のロボットユーザーによる1対1のロボットバトルや、特定のコースを走ってタイムを競うといったアスリート系(画像4)、オペレーターが一切操縦しないロボット任せの自律型(画像5)、ロボット版障害物競走型(画像6)、お気に入りのロボットを選んで投票するといった観覧者参加型、プロレススタイルのショー型(画像7)など、多種多様。まさにお祭りといった趣である。今回行われた全イベントは、以下の通りだ。カギカッコ内はそのイベントの中で今回実施された競技で、カッコ内は本拠地。

画像4。アスリート系競技の代表例、「ジグザグ一本橋」。いつもは東京は板橋のロボットショップ「Robotma.com」で開催されている「チキチキロボマッチ」(ミニ版は月1ペースで開催中)の競技の1つである。制限時間内にゴールまで走り、そのタイムを競う内容だ。パンチカーペットなので歩行モーションがしっかりしていないと、すぐつまずいて倒れ、コース外に出てしまうとやり直し。もちろん操縦テクニックも求められる

画像5。今回唯一の自律競技「さがしてポン」。姫路科学館で年に夏と冬の2回(ほかにミニ版も開催)行われている「姫路ロボチャレンジ」の競技の1つだ。ロボットはセンサからの情報を頼りに、発泡スチロールのボール(大小3種類ある)を見つけ出し、それをリング外に落とせば得点。もちろん自分が落ちないようにセンサが取り付けられているが、中にはリング際を識別できず、落ちてしまうものも。落ちたらそれで終了

画像6。参加は自由で、一般観覧者もロボットを借りて楽しむことができた、ロボットフォースのロボ・アスレチック「ソード7」。いくつもの障害をクリアしてゴールを目指し、そのタイムを競う内容だ。一部のロボットユーザーがかなり熱くなってタイムアタック合戦を展開していた

画像7。ロボットプロレス「できんのか!」『の1戦、流血仮面(左)vsワルー』。今回『のショー』は通算8回目。操縦者によるバトルではなく、それぞれキャラクターのあるロボットレスラーがリングでプロレスを行っているという設定のショー。ガチンコの勝負の時もあるが、お笑いも多く、今回もメインイベント「ナガレゴールドvsサンダーボルト」戦では、ナガレゴールドの魔術「時報」が発動し、スタッフも観客も取材陣も全員、こけた(こけないといけないというお約束)

ちなみに、事前に参加者を募集した競技は以下のとおり。

  • サンライズヒーローロボット バトル(サンライズ公認)
  • ナガレンジャーファイティングフェスタ「ロボットかるた」(本拠地:山形県長井市)
  • チキチキロボマッチ「ジグザグ一本橋」(本拠地:東京)
  • チロルチョコロボット大会「チョコゲッタープラス」(主な開催地:東京)
  • 姫路ロボチャレンジ「姫路城築城」「さがしてポン」(本拠地:兵庫県姫路市)
  • YOKAロボ「ミニマムロボットバトル東西対抗戦」「ブレーザー」
  • ROBO-SOCCER(本拠地:静岡県)
  • ロボでサバゲ!「殲滅戦」「フラッグ戦」「要塞戦」「ランブル」(本拠地:東京)
  • わんだほーろぼっとか~にばる「ボトルトラクション」(本拠地:東京)

また、以下は自由参加可能だった競技

  • ホビーロボット研究会「バトルカーナ」(本拠地:未確認)
  • ロボカントリー4「面白ロボット コンテスト」(本拠地:香川)
  • ロボットフォース「ロボアスレチック・ソード7」(本拠地:大阪)
  • ロボットゆうえんち「2足歩行ロボ体験操縦サッカー」(本拠地:東京、子ども向け)

そして、ショー型

  • ロボットプロレス できんのか!8(本拠地:埼玉県)

中でも見所といわれた「ROBO-SOCCER」は、エキジビションマッチながら11対11を超えて12対12が実現し(いきなり2体が離脱して12対10となった)、2足歩行ロボットによるサッカーの世界記録を達成(画像8)。これはまた別記事で改めてお届けする。

画像8。「ROBO-SOCCER」。2足歩行ロボットによるサッカーは、通常3対3で行われることが多い。これまでは、2010年の12月に秋葉原で行われた「アールティ主催サッカー」のエキジビションで7対7が世界最高記録(日本以外にここまでホビーの2足歩行ロボットが多い国はないから、日本一=世界一だろうという推測)だったが、今回、12対12が実現した

全競技の内、一般の観覧者も多く、おそらくは一番の盛り上がりを見せたのが、2日目に行われた「YOKAロボ ミニマムロボットバトル東西対抗戦」(画像9)だろう。アンダー1kg級=「U1K」と呼ばれる小型のロボットによるバトルで、そのロボットのユーザーの居住地で東西に分けての対抗戦である。小型機とはいっても投げ技を備えた機体や、機動力の高い機体も多く、なかなか熱いバトルが繰り広げられ、東軍の勝ちとなった。

画像9。YOKAロボの「ミニマムロボットバトル東西対抗戦」。1kg以下級のロボットは小柄だが、逆に軽いのでスピードが速い機体もあるし、姫路ソフトワークス製の「JO-ZERO」などいくつかの機体は「投げ技モーション」も備えており、ただパンチするだけでなく、華麗な投げ技を披露。2日目の開催ということもあって、一般の観覧者も多く、大いに賑わっていた

また、唯一の多脚型ロボットによる競技で、ロボットが搭載した電動ガンでBB弾を撃ち合う「ロボでサバゲ!」も目を引いていた(画像10)。BB弾が速すぎるため、どのロボットがどこを狙っているのかがわかりづらい点はあるのだが、それでも迫力は別格。BB弾が飛び出さないよう、ビニール幕やプラ板などで覆っていたのだが、跳弾が飛び越えてきたり、中にはプラ板を貫通してきたりしたものも。気分は戦場カメラマン(けが人はもちろんゼロ)。ちなみにどういう仕組みで被弾を検知するのかというと、アルミ箔で覆った立方体や直方体が被弾センサで、撃たれて穴が開くと中に入ってくる光量が増えるのでそれを検知してロボットを停止させるというわけだ。被弾したセンサのアルミ箔にはいい感じの(笑)貫通痕があり(画像11)、ほかのロボット競技では観られない楽しさがあるのだ。

画像10。「ロボでサバゲ!」はこんな特設フィールドで開催される。一部は2足歩行ロボットも参加しているが、基本は多脚型や戦車型で参加しており、全操縦者はみな無線LAN経由のカメラ画像を利用して戦う。パイロット感覚で操縦するというわけだ。競技は、相手チームのロボットを全滅させると勝ちの「殲滅戦」、相手チームのフラッグを倒せば勝ちとなる「フラッグ戦」、殲滅戦の派生型で陣地を作って待ち受ける防御側に向かって攻撃側が攻めていく「要塞戦」、そして自分以外はすべて敵という「ランブル」の4つが今回行われた

画像11。被弾センサをやられて、擱座したロボット。アルミ箔の立方体に3発(4発?)分の穴が開いているのがわかる。穴が開くと外光が立方体内に入って明るくなるので、センサが被弾したと判断してロボットの電源が切れる、という仕組みだ

あと最後に、一番かわいかったイベントも紹介。毎年チョコレートの溶けにくい2月頃に開催されている、「チロルチョコロボット大会」だ(画像12)。チロルチョコの協賛を受けたイベントで、4軸(サーボモータを4個搭載し、関節の自由度が4つあるという意味)の小型ロボットが参加できる。ロボットたちの歩き方がとにかくかわいくて、子どもはもちろん、女性にも受けそうなイベントである。

画像12。「チロルチョコロボット大会」の「チョコゲッタープラス」は、ロボットに何個チロルチョコをゴールまで制限時間内に運ばせられたかを競う内容。まずはロボットをロボットアームのところまで行かせ、操縦者がロボットアームのカップにチロルチョコを入れ、ロボットの背中のカゴめがけて注ぎ込ませる(もちろん多く入れるにはテクニックがいる)。そして、重くなってなおかつ重心の崩れたロボットを、なんとか操縦してゴールに向かわせるのだ。欲張ると重すぎて歩けなかったり、途中で倒れてせっかくカゴに入れたチョコを全部ぶちまけたりと、なかなか楽しい競技である

今回のイベントの面白さはどれだけ書いても伝えきれず、紹介しきれないことが非常に悔しくもあるほど。とにかくこれほど楽しかった取材はまずなくて、来年もあればぜひまた取材したいと思っているぐらいである。しかし、今回はたまたま日本SF大会がグランシップを借りたところ、大ホールがまるまる空いてしまい、そこで無料で使わせてもらえるという話になったから実現したということなので、この規模の会場を格安で借りるというのはかなり難しいようである。なにはともあれ、これだけ楽しいイベントを取材できたことに関しては、主催者や関係者、参加したホビーロボットユーザーの方々には本当にお礼を申し上げたい。

なお、近年は首都圏、関西、九州などホビーロボットが活発な地域では、それこそ毎月のように何らかのイベントが開催されている。またそれほど頻繁ではなくても、年1~2回、もしくはおおよそ1シーズンごとに1回程度なら、全国各地で開催中だ。読者の皆さんのお住まいの地域、もしくは近県でもそうしたホビーロボットのイベントが行われるので、次はぜひ地元の競技会を観に行ってほしい。いや、この際だから、自分でロボットを作って参加してしまうのもありだ。どの競技会も創意工夫を凝らした楽しいものばかりだし、初心者を考慮したルールやクラスなども設けられているものも多いので、観ても参加しても楽しめるので安心。これを機に、ぜひホビーロボットのファンやユーザーそのものになってもらいたいものである。