味の素と天使大学の斉藤昌之教授を中心とした研究グループは、辛くないトウガラシ成分であるカプシエイト類の機能研究の成果として、褐色脂肪組織の活性が低いためエネルギー消費量が低下した成人にカプシエイト類を継続摂取させたところ、低温環境下(19℃)においてエネルギー消費量が増加することを確認したことを明らかにした。同成果は、2011年9月23日~24日に開催される第32回日本肥満学会と、同24日のランチョンセミナーで発表される予定。
これまでの研究により、褐色脂肪組織はエネルギー消費量の調節を司り、体脂肪量の増減に関与することが明らかになっている。斉藤教授らのグループは、PET画像診断を利用して成人の褐色脂肪組織を検出する技術を開発、「褐色脂肪組織の活性が低いと肥満に繋がる可能性が高い」ということを発見していた。また、ヒトは外気温の低下により体温を維持しようとエネルギー消費量を上げて体熱を産生するが、この体熱産生に褐色脂肪組織が関与していることも分かりつつある。
今回の研究は、褐色脂肪組織の活性が低いヒトでもカプシエイト類の継続摂取によりエネルギー消費量増加作用が誘導されるかどうかを検討する目的で行われた。
具体的にはPET画像診断の結果、褐色脂肪組織の活性が低い男性(6名)を対象に、カプシエイト類(9mg/日)を摂取前と摂取後(約7週間)に、寒冷刺激を与えた環境下(室温を27℃から19℃に変化)でエネルギー消費量の変化を調べた。
その結果、カプシエイト類の摂取前の室温変化によるエネルギー消費量の変化が約25kcalであったのに対し、カプシエイト類の継続摂取後(約7週間)のエネルギー消費量の変化は約210kcalと約8倍に増大していることが確認された。
また、脂質酸化量の変化は、摂取前約0.7g/時間であったのに対し、摂取後は2.0g/時間と3倍に増大していることが確認され、これらの結果から、元来、褐色脂肪組織の活性が低かったヒトでも、カプシエイト類の継続摂取により活性が高まり、体質としてエネルギー消費がしやすくなった可能性が示唆されたという。
なお、研究グループでは、カプシエイト類の継続摂取は肥満抑制に有用であることも考えられることから、今後、さらなる研究を行っていく予定としている。