パナソニックは9月15日、「充電式電池EVOLTA」を動力源にしたロボット「エボルタくん」を用いて、長持ち実証実験を実施する「エボルタ ワールドチャレンジ」第4弾「トライアスロンチャレンジ」を、日本時間の10月24日(月)よりスタートすると発表した。
今回は10月21日より販売を開始するEVOLTA電池シリーズの最新製品「HHR-3MWS」が動力源。JIS C8708 2007(7.4.1.1)の試験条件に基づく電池寿命は、繰り返し充電で約1800回を達成。従来品の「HHR-3MVS」と比較して充電繰り返し回数が200回増えている。
そして今回もロボットのエボルタくんは、もちろんロボットクリエイター兼東京大学先端研特任准教授の高橋智隆氏が開発を手がける。驚くべきは、今回はトライアスロンに挑戦するという点。しかも、トライアスロンの中のトライアスロンともいうべき、総距離約230kmの「ハワイ島 アイアンマン トライアスロンコース」だ。このコースは、世界中の予選に勝ち残った選手のみが参加可能できるという、トライアスロン競技者の憧れのコース。まさに選ばれし者のための過酷この上ないコースとなっている。
その過酷な230kmに対し、今年は「スイム・ロボット」、「バイク・ロボット」、「ラン・ロボット」の3体で挑む。バイクロボットは、ワールドチャレンジ第2回(2009年)にル・マン24時間に挑戦した際の3輪車の経験を、ランは第3回(2010年)の東海道五十三次の経験が活かせるが、スイム・ロボットは初挑戦だ。どのロボットもEVOLTA電池単三形を3本だけ使って、充電時間以外は24時間休まず泳いだり走ったりし続けて、1週間(168時間)以内を目標にゴールを目指すことになる。
各ロボットのスペックは、まずスイム・ロボット(画像1・2)が全長51cm、全高26.5cm、全幅10cm。カーボン、プラスティック、ステンレスなどで作られている。浮力を確保する流線型フローターが前後に付き、安全性を保つためのカーボン製キールも設けてある。クロールで泳ぎ、実際に推進力はその手の動きだ。また、防水仕様の特別設計の電池ボックスを搭載しての挑戦となる。赤外線でスイム・ロボットは、ライフセーバーがサーフボードに赤外線発振器を搭載して泳いで誘導するそうだ。波も高く、潮の流れも強く、また風も吹くので、かなり過酷なトライになるという。
そしてバイク・ロボット(画像3・4)は、ル・マン24時間の3輪車からデザインは一新されており、補助輪は付いているがより自転車(ロードバイク)らしいデザインとなった。全長23cm、全高21cm、全幅12cm。カーボン、プラスティック、βチタンで作られており、長距離走行のためにスピードと持久力を両立させた形だ。バイクの区間は勝負所となるため、ここでタイムを稼げないと1週間でゴールするのは難しいと目されている。そのため、デモンストレーションを見る限りでは、平坦な道での速度はかなり(正確な速度は不明)出せるようだ。実際のコースは日光が非常に強く、アップダウンもあり、また海風も吹くので、そういった点でも非常に小型ロボットにとっては厳しいという。こちらも赤外線追尾式で、誘導されて走る仕組み。
画像3および4。バイクロボット。ル・マン24時間の時は後輪は2輪とも大きくて完全に3輪車仕様だったが、今回は2輪の両脇に補助輪があって、いってみれば4輪。バイク部分は細身に設計されており、実際にこぐことで進んでいる模様。(写真は公式サイトより抜粋) |
ラン・ロボット(画像5・6)は、やはり東海道五十三次の時と同じように、リングの中で走る形だが、今回はちゃんとリングに足が接している点が違う。とはいっても、中でハムスターがハムスターリングをグルグルと回すように実際に走ることリングの駆動力になっているわけではない模様。おそらくはリングそのものか後部の補助輪、もしくは両方ともに駆動輪となっていると思われる。ここもバイクと同様の環境に加え、街中も走るので、車道と歩道の段差などさらに難しい条件が増える。ゴミもあることだろう。そうしたギャップを乗り越えるためのトルクも考慮して作られているようだ。ほかの2体と同様に、こちらも赤外線誘導式。
画像5および6。ラン・ロボット。ハムスターがハムスターリングの中にいるようなイメージ。ただし、リングの中で足を動かしているが、おそらくは動力になっておらず、実際には東海道五十三次の時の大八車仕様と同様にリングや後ろの補助輪が駆動輪となっているのではないかと推測される。(写真は公式サイトより抜粋) |
そして今回は、充電器の「チャージパッド」もポイント。置くだけで給電できるという無線給電方式で、セットする手間などを省いたものとなっている。
続いてコースの説明だが、こちらはハワイ島が舞台(画像7)で、まずスイムは観光地として有名なコナのビーチからスタート。カイルア湾を沖に向かって1.9km泳いで、折り返しポイントを回って同ビーチに戻る。そしてバイクはコナビーチから南北に貫くハイウェイを往復。北はハヴィ、南はコナビーチの南側まで総距離はなんと180.2kmだ。ここが前述したように、キモとなる区間である。最後のランは、再びコナビーチ近辺に戻って、北はコナ国際空港kから南はセント・ピーターズ教会までの市街を含めた42.2kmを走る。
画像7。ハワイ島の海および海沿いのハイウェイや街路などを舞台に繰り広げられる総距離約230kmの過酷なトライアスロン。エボルタくんは人の約1/10のサイズということで、実際のアイアンマントライアスロンのルールが17時間以内で完走して初めて「アイアンマン」と呼ばれることから、その10倍の170時間、若干厳しくして1週間ピッタリの168時間となった |
もしロボットが故障した場合は修理による中断はOKで、修理完了後はその中断箇所から再開となる。現地の乗用車と接触するなどの不慮の事故などで完全に壊れてしまった場合は、予備のロボットと交代することは可能だが、電池の交換は一切なしだ。
なお、今回の挑戦に先立ち、9月23日(金・祝)に行われる「大磯ロングビーチ・トライアスロン キッズ4年生男子の部」に前哨戦として、エボルタくんが参加する予定。同大会は9時30分からスタートとなる。ぜひ、応援しに行ってみてはいかがだろうか。