富士通研究所は9月16日、CPU間での大容量・高速通信を可能とする光によるインタコネクト(データ伝送)を実現するために必要となる、光送受信器用のシリコンフォトニクス光源を開発したことを発表した。
スーパーコンピュータ(スパコン)は2018~2020年ころにかけてExaスケールの実現に向けた取り組みが進められているが、CPUから数10Tbpsで転送されるデータの入出力を実現するためのインタコネクト技術を確立する必要がある。しかし、その転送レートでは、従来の銅配線による電気インタコネクトでは、伝送速度の高速化が限界とされており、より高速にデータ転送が可能な光インタコネクトをCPU間のデータのやりとりにも適用しようという動きがある。
光送受信器の送信部は、光を出す光源とその光に情報を乗せる光変調器で構成され、光変調器は、低消費電力化および小型化に有利なリング共振器を用いた構成が望まれるが、光送受信器はCPUの近くに配置されるため、CPUからの発熱の影響などにより、光源からの発振波長とリング共振器型光変調器の互いの動作波長が合わなくなると、光に情報が乗らなくなるという問題があり、これを一致させるためには温度調整機構が必要で、光送受信器の小型化・低消費電力化を妨げる要因となっていた。
今回、同社では光源と光変調器に用いるリング共振器のサイズを共通化することで、CPUの発熱などによる温度変化に対する、光源の発振波長と光変調器の動作波長の動きを一致させることに成功した。これにより、従来は必要だった光変調器の温度調整機構が不要となり、光送受信器の送信部が小型・低消費電力になり、今回の試作では送信部の長さは1mm以下を実現しており、これを多数並べることで、CPUモジュールに搭載可能なサイズで、大容量光インタコネクトを可能とする光送受信器の実現が期待できるようになるとしている。
今回開発した技術を用いることで将来のExaスケールのスパコンやハイエンドサーバに用いる大容量光インタコネクトの大規模化、低電力化が可能となり、高速コンピュータの実用化が期待されることから、同社では今後も、大規模集積技術との融合により、大容量光インタコネクトを実現する技術の開発を進めて行く予定としている。