企業においてTwitterやFacebookを導入する機運が高まっているが、戦略もなくつぶやいただけでは効果を望めない。それどころか、マーケティング目的で導入したのに、顧客からのコメントや質問、不満にタイムリーに回答できなかったとなると、かえってマイナスとなる。

Gartnerのアナリスト、Carol Rozwell氏が、IT情報サイトのSilicon.comで、「企業がFacebookとTwitterを利用する前に行うべき8つのビルディングブロック(原題:Facebook and Twitter for business? Eight things you should do before diving in)」というコラムで、企業がFacebookとTwitterを導入する前に踏むべきステップについて詳しく説明している。

最初のステップは「ビジョン」だ。自社がどのようなソーシャル事業を展開したいのかを描いておく必要がある。これは従業員ではなく、企業の幹部レベルの仕事。「幹部が策定したビジョンは取締役会の承認も得ておくべき」と同氏。

次のステップは「戦略」。幹部が打ち立てたビジョンを、ソーシャルメディア担当のチームが戦略に刷り込み、会社がどのようにやり取りをするのかという青写真を作ることになる。これは、各事業部から上がってくる展望を整理し、首尾一貫した戦略プランに落とす重要な作業だ。

青写真ができたら、使う側のエクスペリエンス(同氏は「(顧客などの)支持者のエクスペリエンス」と表現している)を考えよう。同氏によると、エクスペリエンスの設計で重要な点は、「どのような価値を提案するのか」というバリュープロポジションを定義することだという。バリュープロポジションの定義は、「参加者の展望を基に行うとともに、参加者が理解しやすく、伝わりやすいものであること必要」とも注意している。

その次の第4のステップは、「組織の変更」、ひとつのヤマといえる部分だ。

ソーシャル事業のプロジェクトは、多くの企業においてプロセスや組織構造の変更を要求する。最終的には、報酬を含むインセンティブ、スキル、さらには企業文化そのものを変える必要があるだろう(自然に変わるのが理想だが)。このような大きな変化を達成するにあたり、管理職から厚い支持を得ることが不可欠だ。ソーシャルプロジェクトを率いるリーダーは、組織変更について新たな考え方を取り入れ、管理職レベルに変更の必要性があることをしっかり理解してもらおう。

5つ目のステップは、「ソーシャルプロセス」だ。ソーシャルメディアは事業部の役目や機能と切り離すことはできず、必然的にこれまでのビジネスプロセスを見直すことになる。ここでは、「電子商取引などの電子化を進めたEビジネス時代にどのような手順を経たのかを思い出すとよい」という。

6つ目と7つ目のステップは「ソーシャル情報」と「測定基準」だ。ソーシャルメディアは豊富な情報源となりうるが、すべてをフィルタにかける必要はない。どの情報を分析するのかを考えておくこと必要がある。「タイム・ツー・マーケット、顧客リテンション、社員の生産性に対する効果の度合いなど、ソーシャルプロジェクトの測定は難しいかもしれないが、プロジェクトのスコープと調査が正確であれば価値を決定することは可能」と、同氏はアドバイスする。

最後のステップが「ソーシャル技術」だ。ここまで組み立てたソーシャルメディア導入の最後のビルディングブロックとなるもので、プロジェクトにあった技術を選択する作業である。ただでさえ複雑なタスクだが、プロジェクトマネジメント、ヘルプデスクなど業務に特化したアプリケーション側もソーシャル機能を付加しており、判断をさらに難しくしている。

同氏は今後、部門をまたがってソーシャル技術を実装する傾向が強まると見ている。正しい選択のためには、「まずは個々の選択肢のトレードオフを把握しておくこと」だという。

まだプロジェクトがスタートしていない企業はもちろん、すでに着手している企業も、今回紹介した内容を参考に自社のソーシャル戦略を見直してみてはいかがだろうか?