富士通研究所と早稲田大学は9月14日、顧客サポート業務において、業務改善に向けた施策の効果を事前に検証する技法を開発したと発表した。
今回発表された技法は、「顧客サポート業務を行う組織の潜在課題の抽出」と「顧客の要求や担当者の知識習得の度合い」をモデル化し、施策を事前に検証することを可能にした。これにより、複数ある施策の効果を提示し、高い効果を生むと想定される施策を選択することが実現される。
同技法は、「現場調査により課題を抽出」、「組織、知識習得度合いをモデル化」、「さまざまな可能性を社会シミュレーションで検証」という手順で行われる。
「現場調査により課題を抽出」のプロセスでは、課題や工夫が可視化されていないアウトプットを、社会科学の現場調査法「エスノグラフィー」を用いて、日常的な出来事の観察やインタビューから重要な気づきを抽出し、知識やスキルにかかわる事象を詳細に分析する。エスノグラフィとは、生活や仕事の場に入り、生活者や働く人の視点から日常の姿を調査する手法。
「組織、知識習得度合いをモデル化」のプロセスでは、分析対象となる知識の伝達方法や伝達にかかる期間など、目に見えない要素を表現することにより、モデル化を行う。
「さまざまな可能性を社会シミュレーションで検証」のプロセスては、施策の効果を多様な観点から分析を行ったうえで、シミュレーションを繰り返すことにより、施策決定の議論を支援する。ここでいう「社会シミレーション」とは、社会における人と人との相互の影響を扱うシミュレーション技法で、社会における施策決定者に対して、施策が社会に与える影響を可視化し、意思決定を支援する。
富士通のSupportDeskコンタクトセンターでは業務改善の一環として、担当者が顧客の個別要求に対応するためのノウハウをデータベースとして整備することを検討していたが、一度にすべてを整備することは不可能なため、この技法を利用して業務改善施策の検証を行った。その結果、当初予測していた施策ではない別の施策が必要とされていることが結果に現れ、改善施策の効果を事前に検証することができた。
今後は、フィールド調査からモデル化までのスピードアップに向け、さまざまな顧客サポート業務のモデルのテンプレート化を図っていく。