アサヒ飲料は9月12日、山形大学農学部生物資源学科の五十嵐喜治教授と共同で、「紅茶ポリフェノール」含有飲料の脂質代謝および糖代謝への改善効果に関する発表を行った。今回の研究成果は、9月9日から11日まで宮城県で開催された「日本食品科学工学会第58回大会」において、アサヒ飲料 商品開発研究所により発表された。

今回の研究の目的は、「茶カテキン」や「ウーロン茶重合ポリフェノール」の機能性については多数の研究事例が報告されている上に、市場も形成されているのに対して、同様にポリフェノールを多く含む紅茶ポリフェノール含有飲料についての先行研究が少ないという現状を踏まえ、その機能性に関する知見の蓄積のために実施された。

研究では、紅茶飲料の濁り防止に用いられる加工技術である「タンナーゼ処理」をした紅茶ポリフェノール含有飲料と、その処理を行っていない同含有飲料を用いて、マウスやラットにおいてその機能性を考察。なお、タンナーゼ処理とは、酵素を利用して、カフェインとポリフェノールが結合することでできる濁りを防止する技術だ。そのタンナーゼ処理によって紅茶ポリフェノールの分子構造が変化することで、進退への機能性も変化する可能性があることから、比較実験を行うことでその機能性を試みたのが今回の実験である。

脂質代謝改善については、セイロン紅茶のタンナーゼ処理をした抽出液を与えたマウス、未処理の抽出液を与えたマウス、抽出液を与えないマウスにおいて、高脂質の太りやすいエサを与え、中性脂肪濃度と長時間の食餌による内蔵周辺脂肪の蓄積量および脂質代謝遺伝子の発現量の比較が行われた。

そして糖代謝改善については、同じくセイロン紅茶のタンナーゼ処理をした抽出液を与えたマウスまたはラット、未処理の抽出液を与えたマウスまたはラット、抽出液を与えないマウスまたはラットにおいて、空腹時の血糖値・インスリン値および糖代謝遺伝子の発現量を比較。

結果、脂質代謝改善については、食餌2時間後の血中中性脂肪の上昇および長期食事後の内臓周囲脂肪の蓄積量について、抽出液を与えないマウスに対して、タンナーゼ処理をした紅茶抽出液を与え続けたマウスにおいて、有意に低下が見られた。また、脂質代謝関連遺伝子の抑制も確認。これらのことにより、タンナーゼ処理をした紅茶ポリフェノール含有飲料に肥満抑制効果があることが示唆された(画像1)。

画像1。血涙TG。CON(青)は抽出液を与えていない対照のマウス。CBT1(黄)は、タンナーゼ処理なし紅茶抽出液を与えたマウス。CBT2(オレンジ)はタンナーゼ処理をした紅茶抽出液を与えたマウス。青とオレンジではピーク時に有意に差が認められる

一方、糖代謝改善については、高脂肪なエサを与えられたマウスにおいて、空腹時の血糖値は、タンナーゼ処理に関わらず抽出液を与えたマウスで有意に低下。インスリン分泌量については、抽出液を与えないマウスに比べ、タンナーゼ処理をした抽出液を与えたマウスに低下傾向が見られ、糖代謝関連遺伝子の抑制も確認されている。

ラットの糖代謝改善については、タンナーゼ処理をした抽出液を与えたラットの空腹時血糖値が、抽出液を与えなかったラットと比べて低下していたことが確認された。これらの結果により、紅茶ポリフェノール含有飲料、特にタンナーゼ処理を行ったものに糖代謝改善効果があることが示唆された(画像2)。

画像2。ラット食餌22日目の空腹時血糖値。タンナーゼ処理をした抽出液を与えたラットと、まったく与えていないラットの間では有意に差がある