パナソニック エレクトロニックデバイス(PED)は、樹脂多層基板「ALIVH(アリブ)」の生産体制を強化する。
ALIVHは、実装される部品点数が多いスマートフォンなどに利用されるパナソニック独自の高密度多層基板で、パナソニック エレクトロニックデバイスの最重点事業と位置づけられるもの。
Any Layer Interstitial Via Hole structure(全層IVH構造)の頭文字をとったもので、1996年10月にパナソニックが発売した業界初の重量100g、容積100cc以下の携帯電話機「P201」に搭載以来、2011年3月末までに累計4億台の携帯電話に採用されている。携帯電話およびスマートフォン向けの多層基板としては上位メーカーの1社となっている。
パナソニック エレクトロニックデバイス回路基板ビジネスユニットの坂本和徳ビジネスユニット長 |
パナソニック エレクトロニックデバイス回路基板ビジネスユニットの坂本和徳ビジネスユニット長は、「ALIVHは、独自の工法および構造により、電子機器の高機能化と小型化の両方を追求した樹脂多層基板で、とくに10層以上の多層化が必要とされるような端末での利用に適しており、スマートフォンの進化を支えるキーデバイスといえるものになる。層と層を電気的に接続するビアを任意の位置に配置できることから、表面積を有効に使うことができ、部品実装面積の拡大にも寄与する。一般的なビルドアップ基板に比べて、基板面積を約25%削減できるほか、容易な配線設計が可能になるため、設計リードタイムおよび生産リードタイムを約3分の2まで短縮できる。さらに化学物質の排出が少なく、地球環境にやさしい点も特徴となっている」という。
高精度積層技術やペーストビア形成などの積層プロセス技術と、独自の接続用高信頼性ペースト材料や高い熱伝導を実現する樹脂材料、低応力積層基板といった材料技術、高精度パータン形成、フィルドビアめっき接続技術といったコア技術により実現されるものであり、スマートフォンや携帯電話、デジタルカメラなどのマザー基板向けのALIVH-G、同じくスマートフォンなどに対応しながら堅牢性を実現しているALIVH-Cのほか、半導体パッケージ、カメラモジュール向け基板であるALIVH-BやALIVH-3Dを用意。さらに今後は、ポリイミドフィルム素材を採用し、フレキシブル性を持たせた高密度、薄板化した基板としてALIVH-Fを製品化するという。
これまでALIHVの生産は、パナソニック台湾で行われており、既存生産設備を月産150万台から300万台体制に増強するとともに、2011年10月には同工場近郊の桃園県に新たな生産工場を稼働。新工場でも月産300万台体制とすることで、2011年度の生産能力は、前年比4倍の月産600万台(スマートフォン換算)に引き上げる。
同工場では主にALIVH-Gを生産。現在、10層を量産中だが、今後12層まで開発しているという。
さらに、このほど新たにベトナム・ハノイに新工場を建設。2012年8月から月産350万台体制で稼働させる。
ベトナムの新工場は、パナソニック エレクトロニックデバイス ベトナム内にALIHV専用工場として、2011年9月から着工、2012年4月に竣工予定であり、延べ床面積は2フロアで2万4000平方メートル。投資額は170億円。同工場では主に12層構成となるALIVH-Cを量産することになる。
「これまでに携帯電話向けのモバイルスピーカーなどの生産を行っていた拠点が隣接していることに加えて、スマートフォンの生産拠点が多い中国市場に近いことも、ベトナムの立地を選んだ理由の1つ」(坂本ビジネスユニット長)である。
これにより、2012年度時点には海外生産台数は月産950万台体制となり、2010年度実績の約6倍へと急成長させることになる。
なお、日本では、三重県・松坂および大阪府門真の生産拠点で、すでに月産850万台の生産体制を確立しており、2012年度末には国内外あわせて1800万台の体制となる。
「世界の携帯端末市場は、一般携帯電話からスマートフォンへのシフトが急激に進んでおり、今後も急成長が見込まれる。スマートフォンは限られた筐体サイズの中にあらゆる機能が盛り込まれ、部品点数の増加や電池サイズの向上が加速していく。ALIVHは、より高度で複雑な機能を実現する樹脂基板として、世界の携帯端末メーカーから多くの引き合いがある。今後、急拡大が予想される高機能端末用回路基板の需要に対応するため、高密度化、高多層化に強みを持つALIVHの海外生産能力を増強する」と語る。
なお、ALIVHを担当するパナソニック エレクトロニックデバイスは、年間売上高3658億円(2010年度実績)、従業員数は約3万人。国内14拠点、海外15拠点を持つ。情報通信向け、自動車家向け、AV機器向けに電子部品を生産している。
パナソニックグループのデバイス事業の売上高は約9%を占めており、そのうち、約4割をパナソニック エレクトロニックデバイスが占めるという。