8月31から9月1日にかけて、「Cloud Computing World Tokyo 2011」および「Next Generation Data Center 2011」が東京国際フォーラムで開催された。会場で開催されたオープンセッションでは、ATENジャパンの企画部 部長である栗田正人氏が「あれば便利で済ませてはいけない! 電力の『見える化』と安全で迅速な『遠隔操作』の薦め」というテーマの下、災害時にも対応可能な電源管理と遠隔管理の実現方法について語った。
栗田氏が講演の中で最初に掲げたキーワードは「非常階段」だ。「マンションなどを建てる時は必ず非常階段が作られる。非常階段はいわば、普段使わなくても絶対に必要なもの。IT管理にも非常階段が必要であり、災害対策は非常階段のようなものと考えてほしい」と語った同氏は、非常階段に当たるものとして「インテリジェントPDU」と「リモートKVMアクセス」を紹介した。
東日本大震災以降、電力使用状況が日々発表されるようになった。同様に、データセンターの電力使用状況も「見える化」することで、電力使用状況をコントロールできるようになり、節電や省エネ、CO2削減が実現できるという。
すでにグリーンIT推進団体の動きも活発になっている。しかし、実際にデータセンターが消費している電力をつぶさに測定できているケースは少ないだろう。こうした状況に対し、栗田氏は「これまでは非常に大まかな数値で計算してきたが、業界は測定能力を高めるべき。最終的にはIT機器ごとの負荷を直接測定できるようになる必要がある。IT機器のエネルギーはPDU(Power Distribution Unit)の出力で測定すべきだ」と語った。
実際にPDUによる出力を測定するために必要なのが「インテリジェントPDU」だ。「インテリジェントPDUは、ブレーカー、ローカル電源表示、リモート電源監視、リモート電源制御に対応し、温度湿度センサーも取り付けられる。これによってIT機器の消費電力が可視化される」と栗田氏。
デモンストレーションでは、ATENが扱うインテリジェントPDU「ALTUSEN」シリーズの管理画面などが紹介された。コンセントごとの消費電流/電力が可視化されることで、接続された機器1台当たりがどの程度の電力を使っているかが一目瞭然になる。接続された機器の停止なども管理画面から行えるが、単純に電力供給をカットするのではなく、セーフシャットダウン設定ができることも紹介された。
「警戒通知機能もアウトレットごとに設定可能。この通知とセンサーの結果から、異常のある機器を止めたり再起動したりできるほか、温度が上昇しているからファンの電源を入れようというような使い方ができる」
次に紹介されたのが、KVMを活用したリモートアクセスだ。オフィスのPC1台を自宅からコントロールするようなシンプルなKVMユニットから、数多くのマシンを切り替えながら操作するKVMスイッチまでを解説。ATENの社員がグアムからオフィスのPCを操作した際の動画なども使い、遠隔地からのコントロールが容易に行えることが強調された。
「この動画はグアムから自席のPCを利用した際の様子だが、撮影されたのは3月11日。震災前の時間に撮影されたものではあるものの、操作した社員は『震災発生後も問題なく遠隔操作できた』と話している」と、栗田氏は直近の災害時の実例として紹介した。
同社は、KVMスイッチ、やインテリジェントPDUなど、さまざまな管理機器から構成される「Over the Net ソリューション」を提供しているが、これらをまとめて制御する統合管理ソフトとして「CC2000」も紹介された。同ソフトでは、物理サーバと仮想サーバの混在環境なども含めて、企業内のITネットワークの一元管理を実現する。
デモンストレーションでは、「プレゼンテーション中にオフィスから助けを求める電話が入った」というシチュエーションでのサーバ再起動が行われた。「CC2000」の管理画面から4つのサーバ画面を表示し、ブルースクリーンになっているものを選択する様子や、そこから再起動する様子をリアルタイムで紹介。簡単な操作で確実にリモート操作できることがアピールされた。
インテリジェントPDUによるIT機器が消費する電力の「見える化」は、社会的な要請である節電や省エネ、CO2削減にこたえるためのツールになる。グリーンITの推進で環境問題対策が義務化の方向へ向かっている今、必要とされるものだろう。またリモートアクセス環境の整備を行うことで、震災時のような出社困難・交通機関麻痺状態への対応はもちろん、パンデミック対策にもなる。
「BCP対策は、生き残り対策」と語った栗田氏は、企業が次に投資すべき対象として高い関心を持たれているグリーンITとリモートアクセスという分野への答えとしてインテリジェントPDUとリモートKVMアクセスの有用性を強調した。