産業技術総合研究所(産総研)は、安価な電力計測器の開発と、それを用いた電力可視化システムを産総研内の計算サーバ室に構築したことを発表した。

これは同情報技術研究部門 スマートグリッド研究グループ 村川正宏 研究グループ長および計測標準研究部門 電磁気計測科 昆盛太郎研究員らの研究グループによるもので、開発された電力計測器は1台で4点の同時測定が可能なもので、市販のクランプ型電流センサと安価な1チップマイコンで構成されており、、量産した場合、計測点1点あたり2,500円程度のコストで製作できるという。

産総研が開発した電力計測器(左:全体、右:信号処理部、信号処理部サイズ:W90mm×D45mm×H25mm)

また国家標準に基づいた校正システムであり、電力計測器の精度を保証することができ、実際に電力計測器を評価したところ誤差は1%程度で、低コストながらも十分な精度が得られているが確認されたという。

加えて研究グループでは、同電力計測器の計測値をインターネット上のクラウドサーバに収集、蓄積する電力可視化システムを構築。クラウドサーバ(Google App Engine)を利用することで、合計249点を計測し計算サーバごとに使用電力を可視化するシステムを短期間で構築したという。

電力可視化システムの全体構成

今回の開発においては、以下の4点を基本方針とした開発が行われた。

  1. 電力不足が本格化する夏までの短い期間で迅速に立ち上げる
  2. 既存の技術を活用し確実に動作するシステムとする
  3. 安価な市販電子部品を用いて、できるだけ安価な電力計測器とする
  4. 測定点が後からでも容易に増やせるスケーラブルな構成とする

具体的には産総研では節電対策として、所内の主要な計算サーバを、1カ所の計算サーバ室に集約することで、排熱に対応した空調の集中による効率の向上を図っている。今回、この計算サーバ室に集約されたサーバごとの使用電力を計測し、サーバの利用者がリアルタイムで視認できるシステムが構築された。

システムは主に、(1)電力計測器、(2)データ収集器、(3)データ収集サーバ、(4)可視化アプリケーションで構築されており、このシステムの規模は、電力の測定点が249点(電力計測器を66台、配置の関係で4点すべてで計測を行っていない電力計測器もあり、データ収集器は4台で構成)となっている。

なお、産総研では、計算サーバ室内のサーバごとの電力使用量が可視化されたため、計算サーバ室の空調に要する費用についてもサーバの使用者に対して電力使用量に応じてそれぞれ可視化することを検討しており、これにより、サーバ使用者の節電意識をより喚起し、節電につなげたいとしている。

また、データセンター内機器の電源断制御による省電力化に、今回開発した使用電力情報収集技術を応用することも検討しているという。これはデータセンターが処理する仕事量の変動に合わせて、稼働する機器を自動的に増減して消費電力を調整する技術との連携であり、具体的には、仕事量が減ったときに一部のサーバに仕事を高速に集約し、残りのサーバの電源を落とすことで全体として省電力化を図り、この集約化のスケジューリングに各サーバの電力使用状況をリアルタイムにフィードバックすることで、さらなる集約の効率化および消費電力量の削減が期待できるという。