富士通研究所は9月1日、スマートフォン用の日英対話支援技術を開発したことを発表した。同技術を利用することで、相手に伝えたい英語の表現の幅が拡大し、意図した通りに伝わるケースが従来比で1.5から2倍ほどになるという。

日本人の海外旅行が増えるにつれ、英会話支援技術の精度の向上が求められているが、従来の例文検索を活用した音声による対話支援アプリケーションなどの場合、検索精度が十分でなく意思疎通がうまく図れないケースも多かった。そのため、対話をよりスムーズに支援するアプリケーションが求められている。

例文検索の弱点は、すべての例文をデータとして用意することはできないため、音声入力しても例文検索で意図しない例文が検索されることもあり、利用者が意図したとおりに対話できない場合も多かった。

そこで、同社が開発したのが、例文検索でのヒット率を高めることができる「あいまい雛形例文検索技術」(画像1)。それをスマートフォンに搭載し、音声認識や自動翻訳機能(同社PC版日英・英日翻訳エンジンをAndroidスマートフォンに適用したもの)とともに活用することで、実用レベルの対話支援機能を実現した。

同検索技術は、入力されたキーワードを判別し、固有名詞や地名などの雛形化を行うことで、より幅広い例文にマッチすることが可能となっている。

つまり、「ニューヨークに行くバスはどこ」と入力した時、「ニューヨーク」が知名であることを自動認識して雛形例文をまずはあいまい検索し、「~(地名)行きのバス停はどこですか」「~(地名)へ行くバスはここに停まりますか」などが検索。その後に、地名の部分に「ニューヨーク」を当てはめた上で出力することで、「ニューヨーク行きのバス停はどこですか」という例文が検索されるというわけだ。

前述したように音声認識や自動翻訳といった機能と統合されており、一度の音声入力で翻訳結果までが同時に1画面内に表示される(画像2・右)。また、音声認識結果をキー入力で修正した場合でも、あいまい雛形例文検索と自動翻訳の両方で修正が反映される仕組みだ。

さらに、あいまい雛形例文検索は、多少の音声認識の誤りがあっても例文検索が有効に働くため、従来の音声自動翻訳による対話支援と比較して、音声誤認識によるいい直しの頻度が少なくってもいる。そのほか、2、3のキーワードを音声入力するだけで例文検索を行うこともできるため、騒音が大きい環境などでの対話支援もより行いやすくなっている。

また、スマートフォン単体で動作するよう設計されており、ネットワーク環境を気にせず世界中どこででも利用可能だ。

実証実験で話者の意図がどのぐらい伝わるかについて評価を実施したところ、従来の音声翻訳のみを使った時は40%、音声による例文検索のみを使った時は50数%だったケースについて、今回のあいまい雛形例文検索技術を用いると約80%にまで改善されたことも確認。今後は、さらなる精度の向上に努め、早期の製品化を目指すとしている。

画像1。あいまい雛形例文検索技術のフロー。音声入力し、地名などのキーとなる単語を自動認識し、雛形例文をあいまい検索してからそこに地名をはめ込むという仕組みになっている

画像2。左が従来の翻訳アプリの画面のイメージで、右が今回のあいまい雛形例文検索技術と、同社の自動翻訳アプリを組み合わせた結果の画面