米セールスフォース・ドットコムは、8月31日~9月2日の3日間、米カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターにおいて、ユーザー&デベロッパーカンファレンス「Dreamforce 2011」を開催した。

基調講演を行う米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEO

Dreamforce 2011には、ビジネスパートナーや、ユーザー企業の経営者、マネージャー、IT担当者など、全世界から4万5000人以上が登録。475以上のセッション、セミナーが行われ、さらに3万5000人以上がオンラインで参加する、世界最大のクラウド・コンピューティングイベントとしての位置づけを強く印象づける内容となった。

8月31日午前9時から開催された基調講演では、米セールスフォース・ドットコムのMarc Benioff会長兼CEOが登場。1万5000人以上の聴講者を前に、Social Enterpriseをキーワードに、同社の製品戦略について説明した。

基調講演ではSocial Enterpriseをキーワードに数々のサービスをデモストレーションした

Benioff会長兼CEOは、「セールスフォース・ドットコムは、ソーシャルの方向に強く踏み出してきた。だが、一方で、何100人もの方々と話をした結果、ソーシャルメディアにおいて、企業と個人が結びついていないソーシャルデバイドが問題になっていることも感じている。そのために3つのステップを踏む必要があると考えている。

1つめのステップは、顧客プロファイルを対象としたソーシャルデータベースの構築であり、2つめのステップは、社員のソーシャルネットワークを構築するということになる。コラボレーション環境を作るだけでなく、カスタマサービスやカスタマ向けアプリケーションをひとつにすることで、顧客とのコラボレーションやサービスに役立つソーシャルネットワークとして活用することができる。

そして、3つめのステップは、カスタマソーシャルネットワークとプロダクトソーシャルネットワークの構築。プロダクトをソーシャルネットワークのなかに組み込んで、そこから解析し、新たな方向性を導き出すものとなる。これらは、Radian 6、HerokuとDatabase.comとの組み合わせによって実現されるものである。これにより、企業がどの方向に進めばいいのかをカスタマーから学ぶことができる。だが、「現時点では、ソーシャルネットワークのゴールは、まだ見えていない。我々としても、ソーシャルネットワークへの取り組みに対して、もっとスピードをあげていく必要がある」などとしたほか、「ソーシャル」、「モバイル」、「オープン」という言葉を使いながら、「今回の発表が企業におけるソーシャルアプリケーションの普及を加速させることになる」として、同社の方向性を示してみせた。

一方で、新たなサービスとして、リアルタイムコラボレーションを実現する「Chatter Now」、Chatterのフィード内から承認プロセスに対するアクションを実行できる「Chatter Approvals」、Chatterを活用して顧客を招待し、顧客と会社の壁を越えてエンタープライズコラボレーションを実現する「Chatter Customer Group」、Facebookなどのソーシャルネットワークを活用することで、瞬時に顧客の質問に対応できる「Chatter Services」を発表。加えて、Data.comを発表し、営業部門やマーケティング部門などの担当者に、必要な情報を提供し、ターゲティングとマーケティング支援を行える環境を実現できるとした。なお、Data.comでは、顧客プロファイルの構築および維持のために、ダン&ブラッドストリート(D&B)の企業情報を利用することになるという。

Chatterに関する新たなサービスを相次ぎ発表

また、Salesforceのアプリケーションと、タッチデバイスに最適化した機能を提供する「Touch salesforce.com」を発表。オープンスタンダードであるHTML5を活用し、iPhoneやiPad、Androidを搭載したスマートフォン、タブレット端末などから、直感的な操作で、salesforce.comにアクセスできるようになる。Touch.salesforce.comでは、既存のForce.comのアプリケーションを利用できるようにするほか、Force.comを活用したセキュアなモバイルアプリケーションを構築することができるとした。

touch salesforce.comを新たに発表した

そのほか、Java対応のHerokuを紹介し、600万人以上のJava開発者に対してソーシャルモバイル対応と、オープンクラウドアプリケーションの開発を支援できる体制を提供。Javaの開発者に投資して獲得したスキルを、ソーシャルネットワークに活用できるようになるとしたほか、固有のアプリケーションやサードパーティのアプリケーションにChatterを拡張することができるChatter Connectでは、SharePointにも対応することで、企業内でSharePointを活用したソーシャル環境を構築できるとした。また、昨年のDreamforceで発表したDatabase.comに関しては、既に同社の10万人以上の顧客にサービスを提供。今回機能強化を発表し、Database.comのデータレジデンシーのオプションによって、クラウドコンピューティングモデルにフル活用できるようになるなどとした。

Chatter Now、Chatter Approvals、Chatter Customer Groupは、2011年後半に提供。Chatter ServicesおよびTouch.salesforce.comは、2012年初めに発売される予定だという。また、Database.comは今日から入手可能であり、Java対応Herokuは、8月31日からパブリックベータ版が利用できる。

一方、基調講演では、バーバリーのCEOであるAngela Ahendtsや、ベライゾンビジネスのCEOであるBob Tooheyが登壇したほか、Chatterのユーザー事例などについて、SymantecのEnrique Salem CEOなど5人のCEOがビデオでメッセージを送った。さらに、コカ・コーラやディズニー、トヨタ、グルーポンといった著名企業や急成長企業において、セールスフォース製品が利用されていることを紹介した。

トヨタとTOYOTA friendで提携。基調講演の会場にはトヨタのプリウスを持ち込みデモストレーションを行った

Benioff会長兼CEOは、「この2時間の基調講演で、ソーシャルエンタープライズとはどんなものであり、企業にとってどれだけ重要かを理解してもらえたと思う。ソーシャルエンタープライズのドアを開けてもらいたい」などと語った。

セールスフォース・ドットコムの製品群