VMwareは8月30日(現地時間)、年次テクニカルカンファレンス「VMworld 2011」において、vSphere 5を中心としたインフラ分野における戦略について説明するなかで、クラウドコンピューティングにおけるネットワーク仮想化の構想として「VXLAN(Virtual eXtensible LAN)」を発表した。
CTOを務めるSteve Herrod氏がカンファレンス2日目のゼネラルセッションにおいて、エンドユーザーコンピューティング分野に続き、インフラに分野関する説明を行った。
同氏は、「インテリジェントな仮想インフラは、『パフォーマンス』『可用性』『セキュリティ』を担保できなければならない」と述べた。同社としては、パフォーマンスを確保するため、ストレージとネットワークのI/Oをコントロールしているという。
ストレージについては、ポリシーベースのストレージ自動運用を実現する「Profile-Driven Storage」や仮想サーバの設定に従ってストレージのロードバランシングを実現する「Storage DRS(Distributed Resource Scheduler)」が、vSphere 5に組み込まれている。
今回、同氏はネットワーク仮想化に関する新たな構想として、「VXLAN」を紹介した。VXLANはMAC-in-UDPをカプセル化することで、レイヤ2の下で仮想マシンのマイグレーションを実現する。これにより、ネットワークの物理的なロケーションから解放されることになる。
「クラウドコンピューティングという視点から見た場合、ネットワークアドレスは問題となる。それはなぜか。例えば、電話番号がその持ち主とユニークな関係で結び付いているように、ネットワークアドレスもそのデバイスの配置場所とユニークな関係で結び付いている。これを切り離さなければならない」
同氏はVXLANの実現にあたり、Cisco SystemsやIntelなどと協力していくことを明らかにした。Ciscoもまた8月30日(米国時間)、9月にベータ版が公開予定のスイッチ「Nexus 1000V」において、VXLANをインプリメントすることを表明している。なお、VXLANの仕様は標準化機関であるIETFに提出されているという。
さらに同氏は、インフラ分野では、「自動化」に注力しているとして、開発に取り組んでいる機能を披露した。
一般に監視ソフトでは、監視対象に異常を発見したら、管理者に警告を行って、管理者が何らかの対策をとることが多い。つまり、このフローでは、管理者が障害対策をとらなければならず、監視の自動化は実現されていない。
そこで同社では、インフラで異常が発生したら、「ソフト側で自動的に対策を行ってから、警告をとる」という逆のフローで動く機能を開発しているというわけだ。
同氏は、このコンセプトを実現するスニークプレビューとして、VMware vCenter Operationsのデモを行った。デモでは、仮想マシン内のコネクションを自動的に抽出し、エラーと思われる部分を表示し、修正する様子が披露された。
vSphere 5でストレージの管理機能の拡充を図ってきたVMwareだが、次に着手したのはやはりネットワークの仮想化だった。すでに、CiscoからVXLANの製品への展開が発表されており、VXLANは拡大していくだろう。VXLANによって、クラウドコンピューティングがどのように進化するのか期待したい。