大日本印刷(DNP)は、カメラで撮った実写映像にCGなどのコンテンツを合成して表示するAR(拡張現実)において、LEDの光を、コンテンツ表示用マーカーとして認識する技術を開発したことを発表した。
マーカー有り方式のARでは、コンテンツを表示するためには、カメラでマーカーを撮影する必要があるが、商品の画像をマーカーとする場合、撮影した角度や光の影響でマーカーとして識別精度が落ちてしまう問題がある。一方、2次元コードのような記号を使用する場合、認識の精度は上がるが、商品の上に一定の大きさで印刷したマーカーを貼り付けるなどの必要があり、商品のデザインと調和しないなどの問題で、使用できる環境が制限されていた。
今回、同社ではこうした課題に対し、LEDの光をマーカーとして認識するAR技術を開発。小型のLEDをマーカーとして使用することで、ショールームや店頭などで使用する場合、商品や空間のデザインに影響を与えず、演出も自由に行うことができるという。
またLEDの光を認識すると同時にLEDの座標(位置と角度)も認識できるため、マーカーがカメラの撮影から外れた場合でも画面上にコンテンツを表示することができるとともに、従来技術よりもダイナミックな動きを表現することができるようになるという。
なお、同社では同技術の実用化に向けた実証実験として女子美術大学と共同で、福岡市博物館で6月18日~9月4日まで開催している「古代七つの文明展~人と地球と太陽の船~」において、100分の1サイズのエジプトギザのピラミッドにLED7個を搭載したAR技術を活かした鑑賞ツールを展示している。同ツールは、iPad2またはiPhone4に、無料アプリ「吉村作治の古代七つの文明展」をインストールし、端末のカメラを通してピラミッドを見ることで、「太陽の船」がピラミッドの側を飛行するCGアニメーションを見ることができるというものになっている。
同社では、今後も店舗やショールーム、博物館など生活者と企業との接点が多い空間を活用して同技術の実用化を進めることで事業化を進め、2016年度までに20億円の売り上げを見込んでいる。