計測機器大手のテクトロニクス社は8月30日、オシロスコープにスペクトラム・アナライザ(スペアナ)の機能を統合した新ジャンルのオシロスコープ「ミックスド・ドメイン・オシロスコープ」として「MDO4000シリーズ」を発表した。

同シリーズは、システムを詳細に検証するためにアナログ4チャネル、デジタル16チャネル、RF1チャネルにおいて、時間相関のとれたアナログ信号、デジタル信号、RF信号を取り込むことができる。

「組込機器にも無線ネットワークの搭載が進んでいるが、そうなると組み込みエンジニアは従来のアナログとデジタルの信号に加え、RFへの対応も迫られることとなる」(Tektronixのオシロスコープ事業部ジェネラル・マネージャのRoy Siegel氏)とのことだが、これまでは、オシロスコープとスペアナを別々に用意し、トリガなどを使ってそれぞれの計測器で測定を行っており、信号の周波数と無線の周波数の時間相関がとりづらく、エラーがあった時の解決が難しかった。「これ1台で、アナログ、デジタル、そしてRFのすべてを同時に、時間の相関性を持った状態で見ることができるようになり、複雑化する設計の問題の解決を容易化することができるようになる」(同)としている。

アナログ/デジタル/RF信号を時間相関を取りながら同時に観測することが可能。左のスライドの1~4番はそれぞれ1がVCO、2がPLLの電圧、3がMSPI(OSI)、そして4がRFのアンテナ出力それぞれを表す

一般的なスペアナに比べて100倍の広帯域となる最高RF入力周波数レンジ6GHz、最高取り込み帯域はすべての中心周波数において1GHz以上を実現しており、同時に4つまでデコードされたシリアル/パラレル・バスを1つの画面で観測することが可能で、各ドメイン間での時間相関が取れるため、正確なタイミング測定で設計上のコマンド/コントロール・イベントによるRFスペクトラムの変化の遅延やレイテンシを知ることができるようになっている。

また、これまで間接的に発生するデバイスの状態に依存するEMIノイズの発生源を特定することは難しかったが、時間ドメインと周波数ドメインの両方のドメインで時間相関をとって観測することができるようになったため、そうした課題も容易に解決できるようになっている。

さらに、ロングメモリに取り込んだ時間軸上の任意のポイントにおけるRFスペクトラムを観測できるため、スペクトラムが時間とともに、またはデバイスの状態によってどのように変化するかを把握することが可能となっているほか、独自機能であるスペクトラム・タイム表示により、時間ドメインのアクイジション内を移動させるだけで任意のポイントにおけるRFスペクトラムの観測ができ、同じ時間ポイントにおけるアナログ、デジタル、デコードされたシリアル・パスを同時に観測することができる。

同様に、時間ドメインのRF波形は、RF入力振動の振幅、周波数または位相が時間に対してどのように変化するかを確認することにも使用でき、これにより、ほかのシステム要素、動作に対する周波数ホッピングのトラジション、セトリング時間、RFイベントのタイミング特性の評価が可能となる。RF時間ドメイン波形は、アナログ、デジタル、シリアル/パラレル・バスのデコード波形とともに表示されるため、デバイスの動作が詳細に観測することができる。

MDO4000シリーズにはアナログ周波数帯域とRF周波数レンジの違いによって4製品が用意されている

MDO4000シリーズのアーキテクチャ

加えて、今までのオシロスコープの操作性を維持しつつ、RFのスペクトラム測定を独立させて存在させることで、双方のエンジニアが違和感なく使えるように工夫が施されており、機器のセットアップに時間をかけることなく、アナログ、デジタル、RFの3者を同時に測定することができるようになっている。

MDO4000シリーズのユーザーインタフェース

「MDO4000シリーズは世界初で唯一のツールだ。セットアップに時間をかけずに済むため時間を有効に使えるようになる、何日も何か月もかかっていた課題を短時間で解決できるようになる。これからより多くの組込機器に、RFの機能が搭載されるようになり、それらの相互接続性などが求められるようになってくることを考えると、それらのデバッグをしっかりと行う必要があるが、組み込みエンジニアの負担は増す。我々はその負担を減らす手伝いを同シリーズを用いてできればと思っている」(同)とのことで、価格としても従来のMSO4000シリーズを使っていたユーザーを意識したレベルとして238万円(税別)からとしており、既存ユーザーの移行などを目指すとしている。

MDO4000シリーズの外観。MSO4000シリーズと同じ筐体とサイズを実現しつつスペアナの機能を搭載した