東京大学などの研究グループは8月25日、我々の天の川銀河の中心にある「セファイド変光星」を発見したことを明らかにした。
同成果は東大および京都大学、名古屋大学、自然科学研究機構国立天文台、伊ローマ大学、南ア・ケープタウン大学の共同研究によるもので、英科学雑誌「Nature」のオンライン版に掲載された。
セファイド変光星はおおよそ2日から50日の周期で明るさが周期的に変化する恒星だ。その周期と星の固有の明るさには関係(周期光度関係)があり、これによってセファイド変光星までの距離を求めることが可能である。また、周期が長いほど若いという特徴からセファイド変光星の年齢を求めることができるという法則も持つ。
今回の発見は、2001年から2008年まで8年間にわたって、名古屋大学と国立天文台が南アフリカ天文台に建設したIRSF望遠鏡(1.4mの主鏡を持つクラシカルカセグレン光学系望遠鏡)とそれに取り付けられているSIRIU近赤外線カメラ(1.25μm、1.63μm、2.14μmの3波長で同時観測可能)を使用して、我々の天の川銀河の中心方向を繰り返し観測することで達成された。
近赤外線なら星間塵を透過して観測が可能なことから、こうした場合にはよく観測手段として使われるのである。逆に、1960年代以降、可視光、赤外線、電波、X線などさまざまな波長の電磁波でもって観測してきたにもかかわらず、これまで一度もセファイド変光星が見つかっていなかったことから、どれだけ発見しにくいかということがわかるというものである。
観測データを解析したところ約10万個の恒星をカウント。綿密な調査の結果、その中のたった3個だが、セファイド変光星が見つかったというわけだ(画像1)。星の明るさから見積もった距離は約2万5000光年で、地球からの銀河中心まで予想されている距離と等しい。
また周期はいずれの星ともほぼ同じで、20日近くあることが判明(画像2)。周期から年齢を求めた結果、これらの星は約2500万歳であることがわかった。なお、同じ周期の変光星が集中して見つかることは予期していなかったという。
2500万年歳のセファイド変光星しか見つからなかったことからわかったのが、3000~7000万年前に誕生した恒星が少ないということ。つまり、銀河系の中心では数千万年のタイムスケールで、恒星の誕生の活発・不活発が繰り返されている可能性があるというわけだ。星のベビーブームというわけだが、このような星形成の変化はどうして起こるのかはわかっていない。なお、銀河中心に対して、今回のような数千万年前の星形成の歴史が調べられたのは初めてとのことである。
ちなみに銀河中心での星の誕生には、星の材料となる星間塵やガスなどが、銀河のディスク領域(太陽系も属する、中心以外の円盤状の領域)の外側から銀河の中心部へ運ばれないとならない。しかし、きれいな円盤の状態で回転しているディスクだとしたら、ガスが中心へ落ちることはほとんどないという。
一方、棒状構造(天の川銀河も棒状構造を持つ可能性があるといわれている)のように単純な円盤ではない場合は、ガスが中心部へ運ばれやすくなるという。そうしたガスの運動に関する研究も行われた結果、数千万年に一度の割合で偶発的にガスが運ばれる仕組みが存在している可能性も浮かび上がってきた。こうした銀河中心部での星形成を促すメカニズムについては、今回発見された天体をさらに詳しく調べることでより詳しい情報を得られるだろうとしている。