ルネサス エレクトロニクスとその子会社であるルネサス モバイルは8月25日、エントリクラスの組込み型カーナビゲーション機器および大画面ディスプレイ付きオーディオ機器向けSoC「R-Car E1」を製品化し、サンプル出荷を開始したことを発表した。

R-Car E1は、ルネサス エレクトロニクスの組込み型カーナビなどの車載情報端末向け統合SoC「R-Car」シリーズの第2弾。従来のカーナビ分野に加え、今後市場拡大が期待されるディスプレイ・オーディオに向けて機能を最適化すると同時に、消費電力の削減を実現した製品となっている。

R-Car E1の特徴の1つは、高品質なマルチメディア処理を1Wの消費電力で実現したこと。R-Car E1は3Dグラフィックエンジン、ルネサス製動画処理エンジンといった高性能マルチメディア処理の専用回路を搭載しており、エントリナビ向けながらミドルレンジのシリーズ機「R-Car M1」並みの性能を有する。3Dグラフィックスを多用したGUIや、H.264/MPEG-4のHD動画再生によるマルチメディア処理を高速かつR-Car E1単体で1W以下の消費電力に抑える。さらに、R-Car E1には独自のガンマ補正回路が搭載されており、表示品質を維持したまま液晶バックライトの消費電力を約50%削減することが可能だ。

そして3Dグラフィックスエンジンには、英Imagination Technologies(IMG)の3DグラフィックスIP「PowerVR SGX」を採用。従来のハイエンド製品に相当する、描画性能14Mポリゴン/秒、443Mピクセル/秒(実効性能値:1106Mピクセル/秒)を実行可能だ。

メインCPUには最大動作周波数533MHzの「ARM Cortex-A9」を搭載し、最大1330DMIPSを実現した。LinuxやWindows、Androidといった汎用OSの実装に十分な処理能力を有している。汎用SIMDエンジンとしては「NEON」を搭載。AACエンコードなど演算負荷の高いマルチメディア信号処理を高速勝つ効率的に実行可能とした。

また、「R-Car M1A」のアーキテクチャを踏襲しており、両製品でソフトウェア資産を共有して有効活用が可能といったメリットもある。さらに、コンポジットビデオ信号出力用DAコンバータ、汎用ADコンバータのアナログ回路を搭載しており、廉価なディスプレイと接続し、タッチパネルや車両の各種センサのアナログ信号を直接入力可能だ。

今後のR-Carシリーズの展開としては、ハイエンド機器向けに更なるマルチコア製品の高性能化、高機能化の開発を進めていくとしている。また、製品のサンプル価格は1個3000円となっており、量産は2012年6月から開始。2013年6月には月産10万個を計画している。

シリーズ第2弾となるシステム・オン・チップ「R-Car E1」。マルチメディア対応で、3Dグラフィックスエンジンなども搭載していながら、1W以下の消費電力となっている