毎日コミュニケーションズ主催のスマートフォンおよびタブレットの総合イベント「マイコミスマートフォンアワード2011」。本イベントにおいて、アドビ システムズの西山正一氏が「スマートフォンアプリ開発におけるAdobe CS5.5の役割」と題し、「Dreamweaver CS5.5」、「Flash Professional CS5.5」および「Flash Builder 4.5」のデモを中心としたセミナーを行った。

同社はデザイン系のツールで知られているが、現在は開発ツール類、ランタイム、サーバ側の技術など、様々なジャンルの製品を提供している。これらの製品群により、ビジュアル、システム、効果測定という一連のWeb関連業務をカバー。制作・配信・分析を最適化する「改善のスパイラル」を作ることができると西山氏は述べる。

各種製品群によってワークフローの改善を提案

スマートフォンの市場は2011年だけでも3,800万台以上の出荷が見込まれるなど、予想以上の拡大が続いており、デバイスの多様化も進んでいる。"ブラウザ+マウス"が中心だった状況から、フィーチャーフォンの小さな画面、そしてスマートデバイスのタッチ操作と、対応が求められる環境が短期間に増え、コンテンツを作る側からすれば悩ましい状況だ。また、アプリ1本の開発コストが1,200~2,400万円とも言われるなか、ビジネスに結びつけるにはコスト削減や収益化も考えなくてはならない。続くデモではこれらの問題改善に役立つ新機能が紹介された。

アプリビジネスはコスト削減と収益化が課題

HTML5対応「Dreamweaver CS5.5」

前バージョンのCS5リリースから短いサイクルでのアップデートとなったDreamweaverだが、スマートデバイスが急増した環境を背景に、5.5ではCSS3とHTML5に対応した。新搭載の「マルチスクリーンプレビュー」では、メディアクエリにより幅に応じて表示が変わるデザインを一括でレンダリング、プレビューすることが可能。多様なデバイスに対応したページ作りを効率よく行うことができる。

HTML5オーサリングとアプリ開発に対応

好評の「マルチスクリーンプレビュー」は複数デバイスの表示を同時にプレビュー

またJQueryモバイルに対応し、モバイル向けの様々なインタラクティビティをライブラリからドラッグ&ドロップで使用できる。さらに、「モバイルアプリケーション」メニューからAndroidおよびiOSのSDKを設定することで、作ったアプリをapkやipaにコンパイルすることも可能となっている。

モバイルアプリへ書き出すことができる

マルチデバイス対応をサポートした
「Flash Professional CS5.5」&「Flash Builder 4.5」

「Adobe AIR」は、様々なプラットフォーム上でひとつのプログラムを動作させることができるランタイム。リリースされた当初は「Mac・Windows・Linuxで同じアプリが動く」という説明がなされていたが、「現在は『PC・スマートフォン、またテレビでも同じアプリケーションが動く技術』というところへ広がってきている」(西山氏)。スクリーンに合わせたインタフェースの調整などは必要だが、アプリケーションの根幹の部分は同じものが使用できるため、マルチデバイス対応のアプリを効率よく開発することが可能だ。

様々なデバイスで動作する「Adobe AIR」

西山氏は、ゲームアプリの制作を行うWoven Interactive社がスマートフォン向けにAIRアプリでコンテンツを提供した事例を挙げ、「Android・iOS両方にそれぞれネイティブのアプリを開発するのに比べ、コストを約45%カットできた」、「アップデートやサポート等も考慮すると、トータルで50~60%の削減になっている」とその効果を説明した。

AIRによるコスト削減効果は?

「Flash Professional CS5.5」では、コンテンツをひとつ作ればAIRおよびAndroid・iOSに対してパブリッシュが可能。またFlashを開発するためのIDE「Flash Builder 4.5」でも、フレームワークそのものがモバイルに対応し、共通のソースコードを使用してAndroid/iOS用のアプリ開発が可能となった。

Flash Professionalの新機能「プロジェクト共有」では、複数のFlaファイル上で特定の部分を共有し、修正を加えるとそれらのファイル全てに反映される

Flash Builderでは、PC上でのエミュレートだけでなく、Android端末を接続して実機で動かすことも可能だ

「InDesign」と「ADPS」で付加価値ある電子書籍

出版業界にとって、電子書籍に新たな付加価値を持たせていくことはビジネスを広げる上での課題となっているが、独自にアプリ開発を行うのはハードルが高い。同社では、InDesignのデータを専用サーバ上に預かり、様々なデバイスで動作するContent Viewer向けに変換、効果測定まで行えるサービス「Adobe Digital Publishing Suite」の提供を開始した。現在、世界で毎日10~20本が同サービスを利用してリリースされているという。例に挙げたゴルフ雑誌では、クラブの打球音を聞けたり、プロのアドバイスを動画や音声で収録するなど、文字や写真以上に伝えられる情報の多いメディアとなっていた。

InDesignのデータを多様なデバイス向けのアプリに変換

出版社にとっては、通常のInDesignのデータを活用しながら、コストを抑えてアプリ開発を行うことが可能になる。また紙媒体では計りきれなかった広告効果も詳しくトラッキングすることで、広告主側へ媒体の新たな価値をアピールできる可能性もある。料金は年間60万円で5,000ダウンロード分(定期刊行物の場合はダウンロードフィーが発生)などとなっている。

コストをかけずに付加価値の高い電子書籍アプリができる

CS5.5はそれぞれのツールでスマートデバイス対応コンテンツの制作をサポートする機能が大幅に強化されたバージョンとなっている