奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の研究グループは、たんぱく質を使うバイオ技術で作製した高密度の均一なナノ粒子を含む3次元のフローティングゲートメモリを動作させることに成功したことを明らかにした。
同成果は、同大物質創成科学研究科 情報機能素子科学研究室の浦岡行治教授と同大学同研究科 メゾスコピック科学研究室の山下一郎教授らによるもので、応用物理学会論文誌「Applied Physics Express」に掲載された。
同研究グループは、たんぱくなどの生体超分子を半導体ナノ加工に応用する研究を展開してきており、これまでに、これらの材料が半導体デバイスの電極として、応用可能であることを発表してきた。今回の研究では、これらの材料を半導体基板上に3次元的に積層する技術を開発、その電気特性の改善を実証したもので、進化分子工学の手法を取り入れることで、ナノ粒子を一層ずつ積みあげることで、超高密度かつ高信頼性のメモリの作製に成功したという。
半導体メモリの製造工程にバイオ技術を組み込む同技術は、生体の細胞に含まれ、金属分子を包み込み貯蔵する球殻状たんぱく質分子(フェリチン)を利用し、サイズの均一な電極になるナノ粒子を作製することで、メモリ素子の動作電圧のバラつきを抑制することに成功した。
また、球殻状たんぱく質が持つ自己組織化の能力を利用することで、Si基板上にナノ粒子を高密度に3次元配置することに成功したほか、特定の材料を認識するペプチド(アミノ酸分子)をフェリチンたんぱく質のまわりにつけること(進化分子工学)で、決められた位置に次々に3次元的にたんぱくを積み重ねることを実現、これにより、メモリ特性の改善を実現した。
さらに、同技術を用いると、従来の半導体製造プロセスが場合によっては1000度程度の高温環境を必要とするのに対し、比較的低温で形成が可能なため、巨額な設備投資が不要となり、結果として低コストかつ高性能、高信頼性を実現したフラッシュメモリの大量生産が可能になると研究グループでは説明しているほか、ディスプレイと回路を一体化したスマートデバイス向けメモリなどへの応用も期待できるとしている。