マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)などを発表し、CM、PV、テレビ番組などの映像制作も行う、マルチクリエイター・タナカカツキ流、3DCGソフト「CINEMA 4D Broadcast」の使い方を紹介していく。
今回は、前編でお見せしたムービーの中で展開している、CINEMA 4DのMoGraph機能を用いて作った素材を、もう少し細かくみていきます。もちろんムービーの中で使用していないMoGraph機能はまだまだたっぷりあります。これは氷山の一角だと思っていただいて良いです。
手のひらの立方体が徐々に丸みをおびながら振動しつつ大きく成長します。
立方体の角に丸みをつけるのは「フィレットの半径」の数値に変化をつけてます。
CINEMA 4Dタグに「振動」という項目がございます。位置の振動、スケールや角度に振動を与えることも出来ます。
次に立方体のクローンを増殖させます。
MoGraphのメニューからクローナーを選択し、どれだけの範囲にどれだけ複製させるか、この場合XYZ方向に3つずつ、合計27個の複製を作っています。
先程の立方体の「フィレットの半径」で再び角に丸みをおびさせています。
丸みをおびたオブジェがそれぞれの方向へランダムに動きます。
MoGraphのエフェクタの中に「ランダム」というのがあり
この数値を変化させることにより、位置や、大きさなどもランダムに変化させることができます。
「メタボール」機能を使用しています。
中心の大きな球に引力を持たせています。周りの小さな球が引力に吸い寄せられそのまわりをぐるぐると廻っています。
突然、引力の値をゼロにすると重力だけが残って球は自然と落下します。
MoGraphのエフェクタの中に「数式」というのがあります。CG特有の数学的な美しい動きを展開させることができます。
画面がひとつの立方体に収まりゆくシーンは「After Effects」上での作業です。
立方体が破砕するシーンは、「Thraushi」というプラグインを使用します。
これらのシーンは1本のムービーとして制作したのではなく、各シーン個別でムービーで書出し、それらはAfter Effects上で編集されました。なぜ、そのようにしたのかというと、あとで編集しやすいからです。1本のムービーを作る際、細かいムービーを素材として取り扱い、つなぎ合わせることによって、タイミングやリズムを微調整します。色味などの調整もAfter Effects上でやるのが効率的で楽しいです。
音の編集もAfter Effects上で波形を確認しながら動きとリンクさせていくことができます。
前回、みていただいたムービーには音が入っていなかったので、ぜひ、音ありの完成版のムービーをご覧ください。
音が入ったからと言って、前回と変わらず、なんてことないムービーではございますが……、ただ、CGのよるムービーは、一昔前、しっかりとした念密な計画を立てて制作するしかありませんでした。それは描画するのに膨大な時間がかかったので、やり直しがきかなかったからです。CINEMA 4Dはソフトの立ち上がりも速く、プレビューも速いということは、試行錯誤しながらの作り方、どうなるか分からないけど面白く化けるかもしれない、そんな未知の余白を残したまま制作することができるということです。これはCGの制作に於いてたいへん重要な事です。このムービーはこれからも制作、トライアンドエラーを繰り返し、進化し続けます。おもしろく化けたとき、またお見せできたらと思います。
タナカカツキ
1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「CINEMA 4D」、「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。キリンジのアルバム『BUOYANCY』など、CDのアートディレクションも手掛ける。