デルは7月29日、エンタープライズ事業の戦略説明会を開催し、"箱売り"ベンダーを脱却し、ソリューションベンダーを目指す同社が「仮想化」をキーテクノロジーとして、具体的にどのような戦略を打っていくのかについて説明がなされた。
米国デル エンタープライズ・ソリューション ストラテジー&テクノロジー バイスプレジデントのプラビーン・アシュタナ氏は、エンタープライズ・ソリューションの注力分野として、「Fluid Dataアーキテクチャ」「バーチャル・ネットワーク・アーキテクチャ」「インテリジェント・コンピューティング・アーキテクチャ」の3つを挙げた。
Fluid Dataアーキテクチャとは、適切なデータを適切なストレージに適正なコストで管理するためのアーキテクチャで、主にストレージの管理に関する戦略となる。「企業では現在、プライマリー、バックアップ、アーカイブなど、さまざまな用途のストレージが使われているが、Fluid Dataアーキテクチャではこれらにおいてシームレスなデータ管理を目指す」と同氏。
バーチャル・ネットワーク・アーキテクチャでは、仮想化されたデータセンターにおけるフラットなネットワークを実現することを目指す。デルは7月20日にフォーステンネットワークスを買収する予定であることを発表しており、これにより同社でも10Gbpsネットワークへの対応が可能になるという。
同氏は、「これら3つの分野に関する製品を開発するとともに、1つのソリューションとして提供していく」と説明した。
米国デル 公共・ラージエンタープライズ事業 エンタープライズ・ソリューション部門 バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャーのドナ・トロイ氏からは、同社が「仮想化」に対してどのように取り組むかについて説明が行われた。
同氏は「これまで、IT業界では約15年の周期で大きな変化が起こってきた。現在の変化は仮想化。仮想化はITが求められているものを変える」と、同社が仮想化に注力している背景を述べた。「仮想化は、人々がいつでも・どこでも・どんなデバイスからもデータにアクセスすることを可能にする。また、仮想化によって、IT部門をサポート部門ではなく、企業の成長に寄与する部門にしたい。企業には仮想化によって削減されたコストを戦略的に使ってもらいたい」
同社は、仮想化を含む企業に対する戦略として提唱している「Efficient Enterprise」を自社で実現することによって、IT予算における戦略的投資の割合を20%から52%に増加することに成功したという。その手順は、「標準化、簡素化、自動化、クラウド化と実にシンプルなもの」と同氏はいう。
具体的には、9,000台のサーバを仮想化し、仮想化によって6,000台のサーバが削減され、その結果、1億ドルのコストを節約できた。会社全体としては、20億ドルのコストが削減できたという。
さらに、同氏は同社の買収について触れた。iSCSIストレージベンダーだったイコールロジックをはじめ、同社はここ数年、積極的に買収を展開している。
同氏は「一見、ストレージベンダーを無作為に買収しているだけと思われているかもしれないが違う。仮想化環境に最適化されたストレージを持っているベンダーのみ買収してきた。すべての買収は仮想環境のインフラのためのもの」と説明した。
同社はグローバルで10のデータセンターを用いてクラウドサービスを提供することを表明しているが、日本でも展開予定だという。その時、いよいよソリューションベンダーとしての方向性が強まってくると言えよう。PCベンダーとして破竹の勢いで成長していった同社がソリューションベンダーとしてどのように変遷を遂げられるのか、期待したい。