Xilinxは、放射線耐性を持つ宇宙グレードFPGA「Virtex-5QV」の量産を開始したことを発表した。
同製品は1Mrad(Si)を超す総照射線量(TID)耐性を持っているため、低地球軌道だけでなくそれ以上の高度でも幅広い宇宙ミッションをサポートできるFPGA。また、シングル・イベント・アップセット(SEU)に対する保護能力が高く、過酷な放射線環境に耐えられるよう設計されている。そのため、実装後でも再プログラムや更新が可能な複雑で高性能な宇宙システムのデザイン設計を、同製品を用いて構築することで、実装までに要する期間を数年から数カ月へと短縮することが可能となると同社では説明している。
シングル・イベント・アップセット(SEU)に対する保護能力が高いほか、シングル・イベント・ラッチアップ(SEL)に対する総合的な安全性や、TIDに対する耐久性、シングル・イベント・トランジェント(SET)からデータパスを保護する能力も有しており、例えばコンフィギュレーションメモリは市販デバイスの標準的なセルラッチの1000倍近いSEU耐性を持っているほか、コンフィギュレーション・コントロール・ロジックと JTAGコントローラもトリプル・モジュール・リダンダンシを内蔵することによって強化されている。
デバイス性能としては、従来のVirtex-5ファミリ同様の第2世代ASMBLコラムベースアーキテクチャを基盤としており、柔軟な36K/18KビットブロックRAM/FIFOや第2世代の25X18DSPスライス、消費電力を最適化した高速シリアルトランシーバブロックによる高度なシリアル コネクティビティ、PCI Expressに準拠した内蔵エンドポイントブロックなど、Virtex-5ファミリ同様のハードIPシステムレベルブロックを多数搭載している。ロジックセル数は13万で、固定および浮動小数点演算に対応した320のDSPスライスを備えているほか、30以上の異なる規格に対応するプログラミング可能なユーザーI/Oを836備えており、多様なシステムコンポーネントへのインタフェースを実現することが可能だ。
また、宇宙向け高速コネクティビティソリューションを搭載したFPGAであり、18チャネルの3Gbpsマルチギガビット・シリアル・トランシーバにより、チップ・ツー・チップ、ボード・ツー・ボード、ボックス・ツー・ボックスのコミュニケーションを可能にしている。
なお、同製品は米国空軍研究所の宇宙ビークル局の後援を受けて開発されたもので、米国航空宇宙局(NASA)の地球科学技術室(Earth Science Technology Office)がELaNa-3キューブサット打上げプログラムと協力し、ジェット推進研究所(the Jet Propulsion Laboratory)とミシガン大学を支援する形で宇宙にて利用されることが予定されている。